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2018年10月23日火曜日

読了メモ「アダムの呪い」 ブライアン・サイクス



読了。

X X、X Y。

そう、性の遺伝子を持つ染色体です。
Yのある方が男性です。
一年や十年の話ではもちろんありませんが
十数万年後には、Y染色体、
すなわち男性は絶滅する。と書かれています。

「せい」は「せい」でも
「姓」とその家系が、男系家族なのか
女系家族なのかを膨大な資料と関係者の協力を得て調査をします。
これだけでも気の遠くなる話なのですが、
ある姓では圧倒的に男性が多く、
また別の姓では女性の数が大きく男性を上回っている
という結果が、数代遡ることができた。
どちらかの性にかたよる傾向は、遺伝するようです。

よく考えると、Y染色体は父親からしか受け継げられない。ここ大事です。
つまり先祖代々、継承されてきた遺伝子こそ
途中の養子縁組やその他の例外事象を除いて
Y染色体ということになる。
たとえば、大帝国を成したチンギスハーンの遺伝子は、
全世界に1,600万人分に及ぶという。

一方で、生物が子孫を残すために
性は必要なのかという問いがでてくる。
実際、微生物や昆虫などでは無性生殖が行われている。
一般的に無性生殖の子孫の数は多くなるが
病原体や寄生生物からの攻撃に非常にもろい。
有性生殖の場合は、性の遺伝子は引き継ぎながらも
多様性に育まれ、新たな社会がそこから芽生えることもある。

最後には、同性愛にも触れています。
例えば、Y染色体なしで、生殖できるのか。
実際に、Y染色体は突然変異や様々な要因で傷つき多様性を失いつつあるという。
ただ、その場合、XX同士で子孫を残せるのか、
卵子同士の細胞核の交換で子どもができるのか。
クローン人間の存在が急に浮上してきます。

このような話に関連する書籍は、積ん読の中にもう一冊あります。
もっと未来に目を向けた時の人類の子孫についての本です。
かなりSFチックになりそうですけれども
それは、またしばらくたってからじっくり読んでみたいと思います。

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アダムの呪い
ブライアン・サイクス 大野晃子 訳
ソニーマガジンズ 2004年






2018年10月6日土曜日

読了メモ「背中の記憶」長島有里枝





読了。

著者は写真家である。
写真家ならではの、彼女の感性ならではの
13の短編小説集。
エッセイという人もいるけど、小説だと思う。

本のタイトルにもなっている「背中の記憶」
男性、特に父親を想像するかもしれない。
でもここでは違う。
大好きだったおばあちゃんの背中だ。

厳しい曾祖父母に育てられた祖母は、
著者に大変優しく、貧しかった自分の時代を
償うかのように、著者の好きそうな服やお菓子を与えてくれた。
遊びから帰ってくると
タバコを吸いながらつまらないテレビを見ていると思えば
アイスがあるよと声をかけてくれる。

引っ越すことになって、祖母と別居することになっても
毎週のように祖母の家に通っていたそうだ。
そして、病院での死別、そのあとの祖母への思い。


続いて、保育園での寂しさを綴った「かたつむりの涙」、
母のお腹の中にいた時から可愛がっている「おとうと」、
そして、団地友達との中でいつのまにか咲いた「はつこい」など。

一連の小説は著者の子供時代を通じた家族の物語で
写真家という視点からみた情景描写がやわらかくてとてもいい。

そして、最後にもう一度おばあちゃんが出て来てくれます。
お花の写真を撮るのです。


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背中の記憶
長島有里枝講談社 2009年