2024年は、こちらにもアップします。

2020年5月30日土曜日

読了メモ「もっとも危険な読書」 高橋源一郎



読了。

週刊朝日に連載されていた
「退屈な読書」という高橋さんの書評を
130本近く編纂したもの。
1本がきっちり本書の3ページ分。

退屈な読書もたくさん集まると
危険な読書になるのかしら。
でも、とっても面白かったですよ。

もちろん、知らない本がたくさん出てきたけれど
読み進めるにつれて高橋さんの筆(口調)も好調に滑りだしてくるし。
自分の積読本や読了本が出てきたりした時は勝手に舞い上がれるし。


老人の主張と題した赤瀬川原平さんのポーンと忘れてしまう話や
武者小路実篤さんの人間として前進と後退を繰り返してしまう話は
思わず吹き出してしまいました。
そうそう、エンタテインメントと純文学の違いってなんだかわかります?
考えてみてください。
ヒントは、ある役柄の登場人物がでてくるかこないかだそうです。


一方で、評論家の文章は、
素人向けにこそ明晰な論理と傍証、
すぐれた表現力と構成力が必要になると
司馬遼太郎さんは話されていたそうです。
同じ分野の仲間に向かって話すには
ほとんどの言語量は不要になるとまで。
蓋し名言ですね。

また、高橋さん自身も
自分の書くものが多くの読者にとって開かれたものでありたいと思いつつ、
実はどこかにいる「たったひとりの読者」に向かって
書いているのではないか、そうあるべきなのではないか、
という自問から逃れられないでいるんだそうです。


さて、自分はこのブログをどういうスタンスで書いているんだろうか........
単なる備忘録だな。

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もっとも危険な読書
高橋源一郎
朝日新聞社 2001年



2020年5月24日日曜日

読了メモ「ユーミンの罪」酒井順子

本記事は、2015年、某キュレーションサイトに掲載したものに
加筆・修正を加えて再掲載したものです。




読了。

昔、歌をよく聴いていた女性歌手は?

という話題になる時がある。
アイドルだったら、キャンディーズ(ミキちゃん派!)とか
小泉今日子とかの名前が出てくる。
もっと遡ると南 沙織とかも好きだった。

でも、それなりに大人となって、
気づいたら、なにげに流れてたのは、
ユーミンだったことはあるよなぁと思うのです。

と、そんな話はどうでもよくて.....。


本書は「ひこうき雲(1973年)」から「DAWN PURPLE(1991年)」まで、
ユーミンの20枚のアルバムをピックアップ。
収録されている曲の歌詞を引用しながら、
聴いていた世代、著者らしく女性の視点での当時の思いや
時代背景について書かれています。

各章の扉には、アルバムの発売年に起きた事件や出来事が書いてあって、
へぇ〜あの時の曲なんだと気づいたり、
その時に自分が何歳だったかとかいろいろ連鎖的に思い浮かべたり。


なかには、ドキっとするコメントがありました。

「PEARL PIERCE(1982年)」の章で

  当時の男性はその歌の真意に気づかず、
  ただ流行のお洒落ソングとして聞き流していたかもしれない。


というところ。
実は、これと全く同じことを、実際に女性から聞いたことがあったりするんです。
怖い.....。


この本を読むのは、正直忙しいです。
なぜかというと、歌詞がたくさん出てくるのですが
活字だけだと、すぐにメロディを思い出せず、
イライラして、曲を再生して確認しながら
読みすすめることになるから。




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ユーミンの罪
酒井順子
講談社 2013年



2020年5月16日土曜日

読了メモ「人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日」 トム・ミッチェル



読了。

表紙はマゼランペンギン。かわいい。
舞台は、アルゼンチン。
主人公であり著者のトムがこのペンギンと出会うのは
隣国のウルグアイの海岸。
そこから越境してアルゼンチンへ行く。

そうなんです、このお話ってノンフィクションなんです。
「かもめのジョナサン」のペンギン版かなと
小説をイメージしていたのですけれど、
事実は小説より奇なりを地で行くドキュメンタリーなのです。


トムは、ウルグアイの海岸で、
海に流出した重油を浴びて真っ黒になって
海岸に打ち上げられたペンギンの死骸の山の中から、
かろうじて息のあったペンギン一羽を助けます。

ペンギンが抵抗をしたのは最初だけ。
風呂場で油を洗い落とし、丁寧に顔を拭いてやり
市場で買ってきた新鮮な魚をあげると
トムにすっかり心を開きます。
疲れると、トムの足にもたれかかって
眠ったりする姿がとてもかわいい。

トムは学校教師の仕事の都合でアルゼンチンに
いかなければならないのですが、
そのためには飛行機にのり、税関を通らないといけません。
トムの奮闘ぶりをよそに、ペンギンは奇声をあげて見つかり
はてさてどうなることか。

アルゼンチンでは、学校の屋上に
トムはペンギンと住むことになり、
ペンギンも生徒たちと友達になり、
一緒にプールで泳ぐようにもなります。
ここにもちょっとしたドラマがあるんですけどね。

しかし、別れは突然としておとずれます。

ウルグアイの海岸でペンギンを助けたことが本当によかったのか、
一緒に連れてきてよかったのか
トムは頭の中でいろいろ考えますが、ペンギンとの思い出がいっぱい。


ある日、ブエノスアイレスの水族館で、
ペンギンの飼育部屋にトムは入れてもらいます。
ペンギンたちはざわめきますが、
その中で、一羽だけ種類の違うペンギンが
ヨチヨチとトムに近づいてきてトムを見上げます。
さも、お腹を掻いてくれない? といわんばかりの顔で。
トムは飼育係から教えられました。

ペンギンは仲間がいないと生きていけない動物なんだそうです。


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人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日
トム・ミッチェル 矢沢聖子 訳
ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年



2020年5月9日土曜日

読了メモ「ひのまる劇場」 江口寿史



読了。

へへへ、たまには漫画も読むんだよ〜
コミックなんて、しゃれたもんじゃないよ。
漫画です。漫画。れっきとしたギャグ漫画!

「すすめ!!パイレーツ」と
「ストップ!!ひばりくん!」の
ちょうど間の作品。
途中から、主人公が誰だかわからなくなっちゃうやつです。
白智小五郎と戸田光国が主人公なんだよ。


ここのところ、江口さんのポップなイラストに関しては、
リアルワインガイドのカレンダーや
展示会の図録に、イラストブック、
最近出たレコードジャケットイラスト集
そして、ジーパン女子のTシャツまでおよびましたが、
今回は、久しぶりの先ちゃんギャグに
一人でクッククック〜クッククック〜と笑い続けさせていただきました。
笑いはよいですね。健康の源です。

今の世代に通じるのかどうかわからないけども
国際馬鹿(うましか)事務局認定のフールマークとか
ヤンキーな子分たちのやたら長くて下品な名前とか
くどいほどのギャグの繰り返しとか
懇切丁寧な脇の説明書きとかが
もう可笑しくてしょうがない。

ひばりくんは、すでに何回か読みなおしてしまっているので、
次、読みかえすならパイレーツかな〜。

ちなみに、「白いワニの栞」なんてのも、持ってます。
ネタ切れの幻覚ではありません。

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ひのまる劇場
江口寿史
イースト・プレス 1995年

2020年5月6日水曜日

読了メモ「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」村上春樹



読了。

Stay Homeという掛け声の下、
今年のGWは、がまんのウィークという呼びかけの下、
みなさまにおかれましては、どのような連休をお過ごしでしょうか。
自分は、ご多聞にもれずひっそりと蟄居しております。
結果、運動不足のため、足が浮腫んで毎日マッサージに余念がありません。

こんなどこにも出かけられない連休の時は、
長編でも読みましょうかねということで
本書を選びました。618ページ。

村上先生お得意の(?)並行する二つのお話があって、
また導入がいきなりな設定すぎて
それでいやんなっちゃう人もいるんだろうなと思いつつも
読み進めていくと、この世界観からは
なかなか抜け出せなくなります。

しっかりと、途中で伏線もあるし、
最後はこうなるんだろうなと思わせる節を
読み取っていくのも面白いかもしれません。
単に、自分が混乱しているだけかもしれませんが。

羊に比べると一角獣は端正で美しく、
清楚なイメージがあります。
そもそも、想像上の動物ですが、
雪の中を足を折り曲げて座り込んでいる姿は
どこか高貴で尊い印象を受けます。
その一角獣の頭骨が並んでいる様を
心落ち着いて読めるのがなぜか不思議です。

暗闇がやたらに多く、蛙、怪魚、押し寄せる水、
得体の知れない「やみくろ」、悪役の記号士二人組、
地下鉄銀座線に通じる下水道など
冒険心をくすぐる要素はふんだんで飽きさせません。
一方で展開される壁の中のお話では、
切り離された影との会話が好きです。

お話のキーとなるのは図書館なんだと思います。
二つのお話に共通する唯一の事象は図書館。
自分も図書館は大好きですけれど、
今は、どこも閉館。しばらく開きそうもありません。
やれやれ、寂しいな。

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世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド
村上春樹
新潮社 1986年