2024年は、こちらにもアップします。

2022年5月30日月曜日

読了メモ「野生の思考」クロード・レヴィ=ストロース



読了。

正直、難しかった。
レヴィ=ストロースを一度は読んでみたいと思っていたが、
たいした予備知識もなく、対抗馬のサルトルのことも
よく理解していないうちに、勢いだけで読むのは厳しかった。

レヴィ=ストロースと言えば、構造主義とよく言われ、
どんなものかと構えていたら、本書は、文化人類学や民俗学の本であった。
オーストラリア北部やソロモン諸島、ニューヘブリデス諸島にある
小さな島々の一つ一つの部族単位ごとの習慣や信仰、習癖などが
こと細かに検証されている。
タブーとされている食べ物や、婚姻にまつわる規定、
これらの掟を犯した場合の罪などは代表的な事例である。
罪を犯した者は、集団の中で食べられてしまうという部族もあるそうだ。
また、動物や植物を思考の象徴に置いた習慣の披瀝が面白い。
あらゆる動物が慣例の象徴であり、タブーの監視役であり、
一方、植物はいつも人間の味方であったりする。

日本はよく多神教といって、山や川、草木、住宅や家具、
あらゆるものに神様が宿っているという話を聞く。
本書に出てくる各部族もはたしてそうであった。
その多神教の考え方が、出生と死、部内の階級に影響しており、
その典型的な型として、インドでは職業カーストとして
民族を分離してしまうという抗えない事例にいきつく。

興味深い教えとして、未開民族は農耕や畜農に無頓着だ
という通念のもとになっているのは、
旅行者が訪れる幹線道路や都市のそばに住んでいて
伝統文化の破壊が最もひどい土地の人間のことを言うそうである。

たとえば、ある部族に自分の氏族神として誰に祈ればよいかと尋ねると
タイプライターや紙やトラックがよいと勧められたという。
それは我々がいつも御厄介になっているものだし、
自分達の先祖から受け継いだものだからではないだろうか。


そして最後の章では、徹底的にサルトルの考え方を批判して終わっている。
この章の意味するところは、サルトルの考えを
少しでも理解しないとわからない部分だ。
今度は、是非ともサルトルの実存主義を一読してみたくなった。

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野生の思考
クロード・レヴィ=ストロース
大橋保夫訳
みすず書房 2016年

2022年5月23日月曜日

読了メモ「アポロって本当に月に行ったの?」エム・ハーガ




読了。

時々、この話を耳にするけれど、
みなさんはどう思いますか。

思い起こせば、
「この一歩は一人の人間にとっては小さな一歩だが、
 人類にとっては偉大な一歩である」
とは、アポロ11号のアームストロング船長の言葉。
翌年の大阪万博での「月の石」の展示。
月着陸船や母船とのドッキングの映像。
そして、月面での活動の様子。
星条旗が立てられた写真もありましたね。

しかし、これらは本当のことなのか。
米国国民の20%は月面着陸を信じていないとか。
本書では、当時のさまざまな写真をもとに
月面での不可解な現象を指摘しています。
はためく星条旗、向きや大きさの違う影、
逆光なのに鮮明に写る飛行士や着陸船のパネル、
星一つ写っていない真っ暗な宇宙。
などなど、他にも言われてみれば。。。。
という写真や映像の解説があります。
もちろん、写真や映像はNASAが公表したものです。

また、アポロ計画の背景にあった
旧ソ連との関係についても触れています。
当時、宇宙開発においては、旧ソ連が優勢でした。
1961年に旧ソ連は人類初の有人宇宙飛行に成功し、
「地球は青かった」
というガガーリン少佐が残した言葉は有名です。

現在、無人ですが火星への探索が開始され、
日本も「はやぶさ1号」「2号」で、
太陽系の探索を始めています。

アポロが月面に着陸したのが50年前。
それを信じるも信じないのも読者が決めることと
都市伝説のようなことを著者は言っていますが、
宇宙への夢を持って生きようと締めくくっています。

ちなみに、著者のエム・ハーガは、
芳賀正光という日本人で
本書を英語で出版し、自身で日本語訳したものです。
さらに、著者は月に土地を持っているらしいです。

本書に結論はありません。

もう一度お尋ねします。
みなさんは、どう思いますか。

私は行ったと思います。

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アポロって本当に月に行ったの?
エム・ハーガ
芳賀正光訳
朝日新聞社 

※下記は文庫本でのご紹介です。


2022年5月15日日曜日

読了メモ「マクベス」シェイクスピア




以前の読了メモから、随分と間があいてしまいました。
これに懲りずにアップを続けられればと思います。


で、読了。

もちろん翻訳本ですが、
初めてシェイクスピアを読みました。

戯曲なので、小説のような地の説明文がありません。
宮殿の広場とか、人物が登場するや退場するとかその程度で
その他は全てセリフです。
ですから、それこそ宮殿の華やかな装飾や
荘厳な雰囲気、セリフに込められた感情や表情を、
自分の脳みそをフル稼働し想像して
頭の中にマクベスの舞台を作る必要があります。
戯曲を読む面白さかもしれません。

スコットランドの王位を巡る話であり、
大きな転換点は「魔女の予言」ですが
マクベスの心のあまりの変わり様、
なぜこんなにまでにマクベスを変えてしまい
惨劇を引き起こす事態にまでなったのかが
なかなか理解できなかった。
自分の頭の中の演出家が頼りなかったかな。

ストーリーはもちろん、
人物の発するセリフの一つ一つに趣と勢いがあって、
シェイクスピアの戯曲ならではの
雰囲気を味わえた気分になれたのはよかった。

でもやっぱり、ゴリゴリに演出の効いた
舞台劇を観賞してみたいと
最後は思ったのでした。

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マクベス
シェイクスピア
安西徹雄訳
光文社 2020年