2024年は、こちらにもアップします。

2018年2月26日月曜日

読了メモ 「癒しの森 ひかりのあめふるしま 屋久島」田口ランディ



読了。

屋久島について書かれた本はきっとたくさんあるだろう。
自然や環境保護を主眼にしたどちらかというとサイエンティックなもの。

でも、いわゆるアウトドアという言葉からは程遠いイメージの著者が描く
このような屋久島の紀行記も面白い。

途中で「もののけ姫」を思わせるようなところも出てくるが
著者にとっての屋久島の第一印象は、「モスラの島」だ。

有名で長蛇の列ができる縄文杉を横目に
一歩、原生林の中に入っていくとそこはもう右も左もわからない。
案内用に樹に貼ってあるテープだけが頼りだ。
道に迷わないためにもテープを見失うわけにはいかない。
足元がおぼつかなくても、人間、上を見て歩かないといけないということがわかる。

現地でのエコツアーを通じて仲良くなったスタッッフとの間では
著者ならではのちょっとスピリチュアルな世界観を語ってくれるところも
他の屋久島の本とは違っていて面白い。
自己を表現することの素晴らしさを屋久島の自然を通して
説いてくれるのだ。


自分は屋久島にまだ行ったことがない。
ぜひ、「モノリス」をみてみたい。

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癒しの森 ひかりのあめふるしま 屋久島
田口ランディ

ダイヤモンド社 2000年




2018年2月21日水曜日

読了メモ 「ジョバンニの耳 宮沢賢治の音楽世界」 西崎専一



読了。

様々な分野、領域に興味を示していた宮沢賢治ですが、
今回は彼の音楽についての話を読みました。

「ジョバンニ」は、もちろん「銀河鉄道の夜」に出てくる子どもです。
ちなみに決して猫ではありませんw
彼の乗る鉄道は、いわゆる軽便鉄道で
ごとごとごとごとと音を立てて走るわけですが、
物語を読んでいくうちに、それが音楽に変わり始めます。
なつかしい「星めぐりの歌」が聞こえてくるのです。

銀河鉄道は、此岸と彼岸を結ぶ鉄道です。
最初、ジョバンニは軽便鉄道に乗っていたのですが
カンパネルラをすぐ前の席で見つけます。
他にも乗客がいます。沈没事故で亡くなった姉弟です。
彼らには、ごとんごとんという音は聞こえません。
遠くのほうから新世界交響曲のようなものが聞こえてくるというのです。
それは、鉄道を降ろされたあと、満天の星空をあおぎながら
ジョバンニの耳にも残っているように思えてなりません。

 
後半は、セロ弾きのゴーシュの話に変わります。
自分は子どもの頃、この「セロ」がいったい何かわかりませんでした。
あっ、チェロのことだったのかと思ったのは随分とたってからでした。

猫、カッコウ、たぬきの子、ネズミの母子
楽長から怒られたゴーシュはこの動物たちから
課題を教えられ、それに対して自分の答えをだそうとしていきます。
これはベートーヴェンの田園が聞こえてくる物語ですが、
宮沢賢治はどこでこれらヨーロッパの音楽に接していたのでしょうか。
その鍵となるのは蓄音機で、なんと今でも実機が現存するらしいです。
もちろん音はでませんが。。。。

上の二つの他にもよだかの星や風の又三郎などにも
音楽の要素が散りばめられているといいます。

そうだったのかぁ、また宮沢賢治を読みたくなってきたなぁ。




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ジョバンニの耳 宮沢賢治の音楽世界
西崎専一
風媒社 2008年


2018年2月13日火曜日

読了メモ「たんぽぽのお酒」レイ・ブラッドベリ




読了。

子ども達とその地域に住む
おじいさん、おばあさん達との交流を描いた物語。
たんぽぽのお酒そのものは最初と最後と
途中、気付け薬にでてくるくらいかな。

老人達は長いこれまでの人生の歴史を持っているけれど
子ども達にはなかなかそれが実感として信じられない。
昔だけに行けるタイムマシーンと捉えるくらいだ。

病床に伏せている時も、キッチンに立っている時、
庭仕事をしている時、一緒に今話をしている時も
子ども達は老人達の話に熱心に耳を傾けているが
それでもおばあちゃんが若かった少女時代のことは
想像だにできない。
おばあちゃんは、自分の大切な持ち物を子ども達に
分け与える。財布やお人形やぬいぐるみ。
そして残されたものは焼いてしまうので子ども達に手伝わせる。

大佐と呼ばれるおじいさんが南北戦争の話をする。
学校でならった知識をもとに、「あの話をして」
「この話をして」と子ども達が大佐にせがむと
やさしく語りかけ話してくれる。
そして、学校では習わない、戦争には勝者はいない
敗者だけで、戦争が終わったことこそが大事なことだと
さとしてくれる。


読んんでいて、ちょっと切なくなりました。
高齢者と子ども達が接する機会が少なくなったいま、
たんぽぽのお酒は作り続けられているのでしょうか。。。。

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たんぽぽのお酒
レイ・ブラッドベリ 北山克彦 訳
晶文社 1991年



2018年2月3日土曜日

読了メモ 「猫怪々」 加門七海



読了。

化け猫の話ではない。
猫の方は雨の中で捨てられていて
震えながらミャーミャー鳴いていた小さな子猫。

その子猫を拾って育てることになった著者の方に
霊感が強かったり、その系のお友達が多いので
その絡みが絶妙に面白い。

子猫は重い持病をもち、片足も健全ではなかった。
他にもいくつかハンディを持っていた。
目が腫れていて、著者が言うには遮光器土偶の顔のようだったという。
(写真は載せませんがわかりますよね。
 ググってみてください画像がいっぱいあります)

時には猫に取り付いていた羽虫のようなものが
一斉に飛んでいなくなったり、部屋の中を
猫以外の獣が動く影が見えたりもするけれど
それでもいいのだ。
猫の名前は「のの」という
のの様(神様仏様)の「のの」だ。

介護の甲斐あって、ののはすくすく育ち
発情期を迎える。ののは雌。
本当は避妊手術は避けたかったのだけれど
持病の関係から踏み切らざるを得なかったところなどは
著者の猫に対する思いの深さを感じる。

私は猫を飼ったことはありませんが、
犬か猫かと聞かれると、猫派です。
犬も好きですけどね。

猫バカを自称する貴方、いかがでしょうか。
ちなみに、表紙の装丁は猫双六になっていて
裏表紙には、猫サイコロが印刷されています。

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猫怪々
加門七海
集英社 2011年