2024年は、こちらにもアップします。

2019年9月14日土曜日

読了メモ「湘南に愛をこめて」 加山雄三




読了。

茅ヶ崎の若大将の自伝的エッセイです。
表紙のイラストは、ご存知、和田 誠さん。
ちょっと、おとぼけ感のあるお顔ですけど
そんなことはありません。

会話の文はもちろんのこと、
地の文の一字一句までが
加山雄三節とでもいうのか
爽やかさ満載の一冊です。

個人的に、他に爽やかな人といえば、
現在の巨人監督の原 辰徳さんとかを思い浮かべるけれど
加山さんにはかないません。特に本書を読んだ後は。

加山さん、実は茅ヶ崎生まれではないんだそうですけれど
幼少の頃に引っ越してきてから、
ずっと茅ヶ崎で育ち、学校に行き、
映画スター、歌手になって
すっかり茅ヶ崎の海のイメージです。
若大将シリーズで山をテーマにした歌を作ったというのですが
スタッフや監督からは、こりゃ海の歌だねと言われたほど。

もともとは、船舶技師になりたかったらしく、
自分の手で、カヌーやヨットをどんどん作っていきます。
その実行力には本当に圧倒されます。
当時、船を作っている写真とかも掲載されているのですが
作業をしながらの加山さんの笑顔がまたいいのです。
これが、光進丸に引き継がれていくんですね。
そういえば、先般、あの船が炎上してしまった事故があったけれど
その後はどうしているんでしょうか。

忘れてならないのが、
茅ヶ崎のランドマーク的な存在だったパシフィックホテル。
覚えている人いますよね。
叔父さんにあたる人のホテルだったらしいのですが
ホテル経営がうまくいかず、
結果として、数十億円の借金を加山さんは
背負いこむことになったらしいです。
そんな苦しい最中に結婚をしたり、
お父さんの上原 謙さんとの厳しくも優しい
親子のやりとりもふんだんに描かれています。


正直、こそばゆいくらいに
加山さん加山さんしている本です。
「君といつまでも」のセリフは
最初、照れて照れて本当に恥ずかしかったとか。
この動画をみるとそれがよくわかりますよw

是非、本書を読んで、
貴方も「君といつまでも」を歌って、
一度、セリフを言ってみてはいかがですか。いや〜照れるなぁ。





==========================
湘南に愛をこめて
加山雄三
ファンハウス 1990年



2019年9月4日水曜日

読了メモ「新編 子どもの図書館」 石井桃子




読了。

ちょっと、今までにない分野を読んでみた。

児童文学っていいよね〜とはずっと言ってきたけれど
その児童向けに自ら「かつら文庫」なる私設図書館を作って
子どもたちに少しでも、読書に馴染んでもらいたい、
本をたくさん読んでもらいたい、
という思いがたくさん詰まった一冊です。

時代は1960年代前半。
日本が高度成長期に入っていく頃の時代背景で
日本での児童向け図書館に対する考え方はお粗末なものでした。

著者の石井さんは、文庫を開設するにあたって渡米して
海外における児童図書館の施策レベルの高さ、
職員や周囲の大人の意識の高さに驚愕します。

日本に帰ってくると、たくさんの子どもたちが
文庫にやってくるのですが、その親たちは
文庫を学校か教育機関の延長線のものとしかみておらず、
「どういう読書の指導をしているのですか」とか
「読み方はどのように教えているのでしょうか」
などのような質問をしてくる親御さんがあったとか。


文庫を支援してくれるお姉さんたちのお話や
兄弟の世話をしながら、本を読みに来る子ども、
親の転勤事情で止むを得ず文庫を離れていく子どもなど
当時の文庫運営の楽しさと難しさが
やさしい石井さんの文章で書かれています。

石井さんはすでに亡くなられています。なんと享年101歳!
生前に文庫開設40周年同窓会なるものが開かれて
当時の世話役のお姉さんや、本を読みふけっていた
子どもたちが集まる機会があったそうです。

今でこそ、公共図書館と呼ばれるところには
児童図書コーナーや児童図書室は併設されていますが
石井さんの子ども図書館に対する思いは
この先の時代にも受け継がれていってほしいと思いました。

みなさんも、あの絵本やあの本とか
子どもの頃に読んだ思い出深い本がいっぱいありますよね。


====================
石井桃子コレクションⅢ  新編 子どもの図書館
石井桃子
岩波書店 2015年