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2025年3月16日日曜日

読了メモ「零の晩夏」 岩井俊二 作

 


読了。

「零の晩夏」
岩井俊二 作
文藝春秋 2021年6月

 映画監督である岩井俊二氏による書き下ろしミステリー。いわゆる名探偵や敏腕刑事が出てくるわけではない。謎解き役は、子どものころから絵が好きで学生時代も美術部で活動していたが、途中で画家になることをあきらめ職を転々とするうちに、ある美術雑誌の編集部に転がり込んだ八千草花音。
 彼女がある展覧会で目にした一枚の絵。似ているのだ彼女に。絵のタイトルは「零の晩夏」。作者は、”死神”と呼ばれる正体不明の画家。その画家が残した他の絵には、偶然にしてはできすぎるような死を予告していた作品があった。

 美術商や業界誌界隈、謎の画家の家族、そして絵描き仲間も含めた人たちからの話がヒントになったり、掻き回されたり。。。でも、勘のいい人は、もしかしたら途中で真犯人はわかってしまうかもしれません。自分は最後までわかりませんでしたけど。


2024年12月30日月曜日

読了メモ「もう終わりにしよう。」イアン・リード作 坂本あおい訳

 

読了。

「もう終わりにしよう。」
 イアン・リード 作
 坂本あおい 訳
 早川書房 2020年7月

ゾワゾワするスリラーもの。本書の半分近くまでが、表紙の装丁にみえるように車内の二人だけの会話からなっている。行き先は彼氏の両親の家。そして彼女はもう二人の関係にピリオドを打とうかと考えている。車内には不穏な雰囲気が充満する。

両親の家は、豚や羊、鶏もいる農家の一軒家。家が見えてくるが、どうやら二階の窓辺に髪を伸ばした女性の姿が見える。母親らしい。彼女は下から手を振るが、夜で暗いため二人の姿は二階屋からは見えないようだ。家に入ると広い部屋に通される。両親の姿はなく部屋はストーブの薪がはぜる音が響く。飾ってある白黒写真に写っているのは自分だと彼はいうが、どうみても髪の長い女の子だし、そもそも写真が古すぎる。料理が準備された食卓の部屋に入ると、両親は少し遅れてひとりづつ部屋に入ってくる。

両親宅からの帰り道、再び車内の場面。夜の雪道、廃校となった彼の母校の前で車を停めるが、ここで異変が。誰もいないはずの校舎から誰かが自分たちのことを見ているのだ。彼は校舎の中に入っていくがなかなか帰ってこない。彼女はたまらず彼を探しにいくが、戻ってくると車がなくなっていた。。。

話の合間、合間に、どうやら刑事が現場調査をしている場面の会話が挿入されている。刑事たちの会話から察するに殺人事件らしい。クローゼットから遺体が発見されたようだ。

最後まで、終始不穏な雰囲気がただよう。猟奇殺人を連想させるようなところもあり、落ち着いて読んでいられなかった。帯には二度読み必至とあったが、自分はもう怖くて読めない。。。




2024年10月26日土曜日

読了メモ「冷たい校舎の時は止まる」辻村深月 作

 

読了。

2004年 第31回メフィスト賞受賞作。文庫上下合わせて1,100ページ以上の学園長編ミステリー。

舞台は屈指の進学校、私立青南学院高校。まず本編に入る前の冒頭でいきなり不安を掻き立てられ、それがこの小説の全てを物語っているように思える。

 「落ちる、という声が本当にしていたかどうか。
  それは、今となってはもうよく思い出せない。」(上 p13)

登場人物は、同校の3年生で各クラスで委員をしていたり、生徒会で活躍する8人の生徒たち。彼らが雪の降る朝に登校してくるのだが、この時点ですでに様子がおかしい。街に人がいないのだ。登校しても学校には下級生も先生も誰もいない。8人だけだ。さらには、なぜか校舎の扉に鍵がかかって一人として外に出られなくなってしまう。破天荒ながら生徒たちから支持されている若い先生がしかけたドッキリだろうと高を括るがどうも違うようだ。そして追い討ちをかけるように不思議なことが発覚する。校舎は3階建てのはずなのに4階と5階が窓から見える。でも昇りの階段はない。

冒頭の書き出しで想像がつくとおり、この高校では校舎屋上からの投身自殺が起きていた。秋の学園祭の最終日の事件だった。しかし、これも不思議なことだが、8人の生徒たちはその自殺した人のことをどうしても思い出せない。たった数ヶ月前のことなのに。。。。

中盤から生徒ひとりひとりに不気味な犯人の手が伸びてくる。真っ白い雪と赤い鮮血の描写は読んでいて背筋がぞくそくしてくる。異次元の世界観にも関わらず、辻村さんの作品は本当に読みやすい。読んでる自分も同じ校舎の中にいるような感じがして生徒たちと一緒になって頭を巡らす。また、話の鍵を握る女子生徒の名前は「辻村深月」で、作者と同じ名前。なおのこと話の世界にのめり込みやすくなる。
犯人がわかって異次元世界の謎も解けたあと、さらに追っかけでもうひと展開があったりと最後まで楽しませてくれます。

「落ちる」という一言が最後まで頭から離れない。なんとも切ないホラーミステリーでした。


「冷たい校舎の時は止まる」
辻村深月 作
講談社 2007年8月刊


2024年10月4日金曜日

読了メモ「ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人」 エドガー・アラン・ポー 作 河合祥一郎 訳

 


読了。

ミステリーの古典。

世界最初のミステリー小説と言われる「モルグ街の殺人」を含め、

全11編が収録されています。


いったいどんな展開になるのだろう…、

現代のミステリーとはちがったどことなくお洒落な雰囲気が漂う作品なのかな

と思いきや、え〜!こんな結末だったのかぁ〜〜〜と驚き!

途中の謎が謎をよぶ展開では、どんな解決を見せてくれるのかドキドキするし、

現場に現れた人物の証言を一つづつ整理しての検証も

読む側を引き込んで没頭させてくれます。

が、よもや真相が。。。。

ある意味、ありえないどんでん返しといえるかもしれません。


ほかの謎解きというかファンタジックなお話は、

どちらかというとエログロナンセンス系でした。

日本の平井太郎さんが感銘を受けて

ペンネームにポーの名前をもじって使ったこともうなずけるものばかり。

ミステリーの謎解き役には、

頭脳明晰な探偵と少しとぼけてるけど行動力のある相棒がでてくるという

いまのミステリーでも定番の人物設定ができあがっていました。

これものちの明智小五郎や小林くんにつながっていくんだろうなと思いました。


表紙の装丁もロートレックとお洒落な感じですが、

中身は江戸川さんチックなお話ばかりです。

お話だけではなく詩が3編ほど収録されており、

翻訳も絶妙で不思議なリズムと音韻の響きが不穏な雰囲気を醸し出してもいます。

暗号解読の「黄金虫」というお話も面白かったなぁ。

未読な方は是非。



「ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人」
エドガー・アラン・ポー 作
河合祥一郎 訳
KADOKAWA 2022年版

2024年3月18日月曜日

読了メモ「谷崎潤一郎犯罪小説集」谷崎潤一郎

 



読了。


「柳湯の事件」

「途上」

「私」

「白昼鬼語」

の4編からなる。


いずれも短編だが存分に楽しい。

なにせ、あの江戸川乱歩が影響を受け、

アガサクリスティの数年先をゆく作風であったりもするわけで。

実際、本書を読むきっかけとなったのは

江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」に二話目の「途上」が引用されていたから。


いずれの作品も、その世界に引き摺り込まれていくように読んでしまう。

精神が異常とも思える人物たちやその妄想、

探偵に問い詰められ切羽つまる心持ちや

独特の妖艶な佇まいを醸し出す描写にとっぷりと浸り込んでしまう。

そして、凄惨な殺人現場かと思いきや、実は、、、というのも面白い。


ミステリーは、そのトリックや謎解き推理を楽しむ向きが多いと思うが

この谷崎潤一郎の怪しい世界を覗き見するのも一興というものです。

おすすめです。是非!!



以下は、Amazonへのリンクです。

「谷崎潤一郎犯罪小説集」

谷崎潤一郎

集英社 2020年



2024年2月5日月曜日

読了メモ 「犬神家の一族」 横溝正史



読了。

市川 崑監督、石坂浩二主演の1976年版は、
もう擦り切れるほど観ているけれど
実は原作をまだ読んでいなかったという事実。

今更ながら、やっぱり読んでよかった。
映画では、どこか腑に落ちなかったところも
見事にジグソーパズルのピースがパチンとはまった。
一方で、映画の脚色が大変素晴らしいことも同時に実感。

ということは、「女王蜂」「獄門島」
「悪魔の手毬唄」「病院坂の首縊りの家」
なんかも、いずれも映画しか観ていないので
原作を読むと新たな発見があるかもですね。

それにしても、那須神社の神主さんがあんなキャラクタだったとはなぁ。
大滝秀治さん演ずる神主さんとは全然違った。
猿蔵もよく喋るし。


以下は、Amazonへのリンクです。

2022年8月8日月曜日

読了メモ「人間の証明」森村誠一




読了。

 母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?
 ええ、夏 碓井から霧積へ行くみちで、
 渓谷へ落としたあの麦稈帽子ですよ。

 母さん、あれは好きな帽子でしたよ。

 (西條八十・作 「帽子」より抜粋)

一世を風靡したミステリー小説。
書影の竹野内豊は、2004年TVドラマでの刑事役ですが、
自分には、1977年の角川映画で刑事を演じた松田優作と、
ジョー山中が歌う主題歌しか記憶にありません。
前年の角川映画は「犬神家の一族」でしたね。

ストーリーは、ご存知のお方も多いと思います。
フィクションとはいえ、戦争という災いに端を発する
一つの事件だったのかと思います。

こうやってあらためて小説として読んでみると
あの時に観た映画のシーンやそれこそ主題歌が再生され、
脳内で原作の形で映画がリメイクされる感じです。

あまり多くを語る必要もないので、
お約束の動画を貼り付けておきます。


===================
人間の証明
森村誠一
角川書店 2004年


2022年6月8日水曜日

読了メモ「容疑者Xの献身」東野圭吾




読了。

東野圭吾さんの作品を読むのは初めてでした。
テレビドラマでは、いろいろ見たことあるけれど。
本書はその代表作ですね。
福山雅治さん演じる物理学者の湯川 学が出てきますし。

話が出来すぎているといえば
もう小説なんで、それまでですけれど、
クライマックスに向かっての
たたみかけはさすがですね。

スタイルとしては、
最初から犯人がわかっているという
倒叙式ではあるんですが、
単に犯人を追い詰めていくだけじゃない
二重のストーリーがあるわけです。
まぁ、ミステリーでもあるし
有名な作品とはいえ、
この程度にしておきましょう。

ちなみに、テレビドラマでは
湯川氏の相方にあたる刑事は女性でしたが、
原作では、同じ大学の友人の男性刑事です。
柴咲コウさんとかは出てきませんのであしからず。

おかげさまで、東野圭吾さん以外の
ミステリー作家さんの本も
結構、積読になってます。

関東地方も梅雨に入ったみたいだし、
雨の日は外に出ないで
読み耽るようにしょうかなっと。

====================
容疑者Xの献身
東野圭吾
文藝春秋 2006年

※下記は、文庫本でのご案内です


2022年1月10日月曜日

読了メモ「カラスの親指」道尾秀介




読了。

ミステリー小説であります。
最近、積読の中にミステリーやSF系が増えてきて
いわゆるエンタメ小説もこれから読もうかなと
いつだったか書いた記憶が。。。

主人公は詐欺師のオヤヂ二人組。
それにスリの姉妹とその彼氏が絡んできます。
ヤミ金相手に、しかけていくんですが、
これがね、全部が全部伏線なんですよね。
最後の最後で、えっ、そうなの?!って。
すべてが繋がって、目の前が開ける感じがします。
見事に騙されましたw

読後感もすっきりだし、ミステリーとはいいつつ
途中の文章も軽快でありつつ、緻密に組まれているし。
やったじゃんと思った次のどんでん返し。
ちょっとホロっときちゃう結末もいいですよ。

あらすじ書くのは野暮なので
内容は是非、読んでお確かめください。

=========================
カラスの親指
道尾秀介
講談社 2009年

※下記は文庫本でのご案内です。


2021年10月27日水曜日

読了メモ「希望が死んだ夜に」天祢 涼




読了。

本書は、書店でも平積みされてたし
本屋大賞の何かの賞を取ったので
ご存知の方も多いかな。

まぁ、読んでいて正直辛かったですね。
ミステリーなので、
闇や影がつきまとうのはいたしかたないですけれど
格差とか、貧困問題とか、世間体とか、見栄とか、
親が子に寄せる勝手な思いとかが
二人の女子中学生に絡まってきます。
その結果、一人が死に、一人は自分が殺した!と。

とにかく出てくる大人がみんな酷い。
こんな大人のいる国の子どもたちの未来はどうなるのかと
心が痛くなるほど。
自分も大人ですけどね。

ラストは、そっちに持っていくのかぁという感じ。
謎解きも早いテンポで進むので、ポカンとして読んでいると
アッという間に終わってしまいますよ。

著者は「天祢 涼」で「あまね りょう」と読みます。
珍しく最近のミステリー小説を読んだのですが、
流行りのミステリーやエンタメ系、往年のSF小説も積み始めてしまってます。
余命のあるうちに全部読了できるんだろうか。
できない時は、墓まで持っていこうと思っています。

==================
希望が死んだ夜に
天祢 涼
文藝春秋 2020年



2021年5月9日日曜日

読了メモ「本陣殺人事件」横溝正史



読了。

金田一耕助シリーズといえば、
市川崑監督、金田一役が石坂浩二さんの映画が大好きですが、
本作品は、お二人の映画にはならなかった作品です。
名作という評価の高い作品と聞いていたけど
古谷一行さんが金田一役で映画かテレビでやったかな。

ミステリーなので、内容は詳しくは書きませんが
密室殺人なのですよ。雪なんかも降っちゃったりして。
で、やっぱりというか琴がトリックに使われちゃったりするんです。
現場であるお屋敷の書斎には、世界中の探偵小説がいっぱい揃っているなど
トリックや謎解きの雰囲気を一層盛り上げてくれます。
警察サイドは磯川警部が出てきます。
「悪魔の手毬唄」では、若山富三郎さんが演じてましたね。

本書は、1975年発刊と古いですが
「黒猫亭事件」という話との二本立てです。
こっちは、顔のない屍体がテーマになっています。
加害者と被害者が入れ違いになってしまうというやつですね。
おっと、こちらもここまでにしておきましょう。

本作品は、丁度、獄門島事件の直後という設定になっていて、
金田一さんも、あの忌まわしい事件を解決したということで
結構、名前が売れているという設定も面白いです。

横溝正史さんの作品は、それこそたくさんあって
まだまだ読んでいないのがたくさんあります。
今年は、ミステリーものも読んでいこうかな。

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本陣殺人事件
横溝正史
東京文芸社 1975年

※上記の書籍は絶版のため、
下記のご案内は文庫本になります。

2021年3月21日日曜日

読了メモ「隠された悲鳴」ユニティ・ダウ



読了。

ミステリー・・・・・
といいたいところですが、謎解きは殆どありません。

作者は、ボツワナの現職の外務国際協力大臣。
テーマは、「儀礼殺人」。

本書の定義によると、

 ある儀式にのっとって
 人体の一部を得るために
 行われる殺人。

とあります。

冒頭、儀礼殺人のために生贄とする少女を探し求めている
犯人が登場します。犯人Gpは3名。
いずれも、社会的地位や実権を掌握している人物です。


ある村の少女が行方不明になるのですが、
警察は、野生のライオンに襲われたものとして
事件を終わらせてしまいます。
それから5年後、国際貢献活動に意欲を注ぐ
若い女性が、ボツワナの奥深い田舎の診療所にきて
とんでもない「証拠」を発見します。
タイトルにある「隠された悲鳴」に相当するものです。

そこから、5年前の事件についての
掘り返しが始まります。
警察をはじめ高級官僚ら数名が首を揃えて
大きな会議室の一角で
真相を追求、いや暴露し始めます。

村人の怒りは頂点に達しており、
当時、なぜ警察は嘘の捜査をして事件の幕を下ろしたのか。
犯人はライオンのはずがない。
「証拠」が物語っているではないか。

真相を開示するページでは、
思わず目を背けたくなるシーンです。
人権問題とも言えるこの事件は
呪術、因習、抑圧、貧困、隠蔽、秘密が幾重にも重なって
一人の少女の命とその惨い扱いを覆い隠しているのです。

遠い昔の話ではありません。
実際にあった事件をもとに
一国の現職の大臣が綴った話です。
今でも現存する犯罪と思うとやりきれません。
現実にはしっかりと目を向けていきたいと思います。


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隠された悲鳴
ユニティ・ダウ 三辺律子訳
英治出版 2019年