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2022年8月12日金曜日

読了メモ「草枕」夏目漱石、「『草枕』変奏曲 夏目漱石とグレン・グールド」横田庄一郎



読了。

「草枕」は、有名なこの文章で始まります。

 山路を登りながら、こう考えた。
 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。
 意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。

また、続いてこうある。

 住みにくき世から、住みにくき煩いを引き抜いて、
 有難い世界をまのあたりに写すのが詩である、画である。
 あるは音楽と彫刻である。

この本を愛読した音楽家がいる。
バッハのゴールドベルグ変奏曲で有名な
カナダのピアニスト、グレン・グールドだ。
クラシックに詳しい人の間では
このことは有名らしいが自分は初めて知った。
彼はこの草枕を「二十世紀の小説の最高傑作の一つ」と評価し、
死に至るまで手元に置いて愛読していたそうである。

まず、その草枕であるが、不思議な小説だ。
筋らしい筋がない。
読み終えて感じたのは、これは小説というよりも
夏目漱石の芸術観の一端を表現したものかもしれないと。
主人公は山奥の温泉場に出向いた
画工(えかき)なのだが、一向に画は描かない。
周りの豊かな自然や風景に心を寄せて詩情を抱き、
那美という宿の出戻り娘に温泉場の人々や
お寺の坊主が翻弄される様を見ては斜に構えていたりする。
最後は、出征する青年と、那美に起きた意外な事件で
画が描けそうな雰囲気になるところでおわる。

一方、グレン・グールドは、草枕を英語版と日本語版で
保存用と読書用に合計4冊も持っていたそうだ。
グレン・グールドと夏目漱石は偶然にも同じ50歳で生涯を閉じる。
草枕をグレン・グールドが読んだのは、
1966年から67年だが、草枕を読む前と後の
彼のゴールドベルグ変奏曲の演奏が
こんなにも違うのかと素人の自分が聴いても驚くほどである。
まだ、ネット上で聴きかじっただけだが
ちょうど聴き比べのできるCDが販売されているので
今度、じっくり聴き比べてみたい。

また、草枕以外にもう一つ、グレン・グールドに影響を与えた
日本芸術の記載があった。
安部公房原作の映画「砂の女」である。
勅使河原宏監督、岸田今日子主演の1964年のモノクロ映画。
グレン・グールドが草枕を読む前になるが
彼はこの映画を100回以上は観たという。
ちなみに、この映画の音楽は、武満徹が担当していた。

グレン・グールドは、人前での生演奏をやめて、スタジオに篭り
ひたすらスタジオの中で演奏、録音や、ラジオ制作をするという生涯を送る。
ミキサーの前に座っている彼は、
スタジオの中は子宮の中にいるようだとも言っていたという。

草枕、砂の女という日本の芸術に影響を受けた
カナダのクラッシックピアニストの生涯。
言葉の壁はもちろんあった筈だが、
グレン・グールドの心底に流れ通じたものはどんな感慨だったのだろうか。

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草枕
夏目漱石
新潮社 2021年

草枕変奏曲 夏目漱石とグレン・グールド
横田庄一郎
朔北社 1998年

2021年12月27日月曜日

読了メモ「文鳥・夢十夜」夏目漱石、「漱石文明論集」三好行雄編




読了。

丁度、漱石先生絡みの本を続けて読み終えていたので
一緒にアップすることにしました。

まずは、短編集の「文鳥・夢十夜」。
実は、夢十夜を題材にした朗読鑑賞会が鎌倉であったので、
本書は、その予習のために手にとったものでした。
鑑賞会当日は、日の高いうちの屋外開催で大変暖かく、
ウッドベースの効果音もあったりで
大層気持ちのよいイベントでした。
ただ、夢十夜そのものは、どちらかというと
しんみりしたり、あるいは怖かったりする話があり
鑑賞会と読んだ印象とはまるで違ったものとなりました。

本書の中では、「文鳥」という作品が好きです。
縁側の陽当たりのよいところに鳥籠がおかれ
文鳥の可愛い足や嘴の細かい様子が繊細に描かれています。
一方で、小鳥は寒さに弱いことや、猫や烏に狙われやしないかと
余計な心配があたまをもたげ、少々じれったくもなりました。

他には、イギリス滞在中の霧のロンドンの話、
漱石先生といえば、胃腸が弱いことで知られていますが、
その病に伏せ苦しみながらもブツブツと不平不満を漏らす話が綴られています。
長編小説ではみられない、
私小説的な面白さが溢れる短編小説集でした。


もう一冊は、講演集です。
面白いのが、全編に渡り、講演の冒頭で
本当は講演を引き受ける気はなかっただの、
やむを得ずここまで来たなどと
まさに胃が痛いような口上を述べています。

多くの講演が収録されていますが、
大正三年の学習院での「私の個人主義」が秀逸でしょう。
教師という職業への疑問、ロンドンで自らの嚢(ふくろ)を
突き破る錐が見つからず、何のために書物を読むのかもわからない。
それで、どうしたかというと、文芸とは一歩離れて
「自己本位」という言葉を立証すべく、科学や哲学の思索に耽ったというのです。
漱石先生はこの自己本位という言葉を得て
大変強くなったと言っています。
霧のロンドンの中で道を見つけることができたと。
若い人に自らの道を積極的に追い求めるよう諭しています。

夏目漱石というと、「エゴ」というキーワードも
一緒に耳にすることがあります。
あまり聞き応えがよくないのですが、
この講演集を読むと、漱石先生の苦しみや
西洋文明に対して自己をいかにして確立したか、
講演ですからまさに肉声が聞こえそうで、
その考え方が手に取るようにわかります。


余談になりますが、漱石先生のお子さんは
茅ヶ崎に住んでおられ、
なんと自分の住まいの近くであったことがわかりました。
これも何かの縁かもしれません。

また、漱石作品を読みたいと思います。

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文鳥・夢十夜
夏目漱石
新潮社 2021年

漱石文明論集
三好行雄編
岩波書店 2019年



2021年3月5日金曜日

読了メモ「坊っちゃん」夏目漱石




読了。

"親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。"

で、はじまるお馴染みの小説です。
何年ぶりに読んだのかなぁ。
おそらく中学生の頃に読んだその時以来だと思うので
かれこれ、四十年ぶりかなw

そこで、皆さんも読んだことがあると思いますので問題です!
下記の登場人物について、坊っちゃんがつけた
渾名を当ててみてください。
さて、何人言い当てることができるかな。。。。

 校長:
 教頭(文士):
 数学主任:
 英語:
 画学:
 遠山のお嬢さん:

あと、坊っちゃんが慕っていたお清という下女がいましたね。

もう中学生の頃に読んだ時の印象は忘れてしまったけれど
今になって再読しても、想定通りに痛快ですね。
べらんめえ調で捲し立ててくるので
すっかり江戸落語を聞いてるような錯覚に陥ります。
テンポもよいし、すいすいとページが進みます。

また、四国は愛媛の「ぞなもし」という方言が
何度も出てきて、短気な坊っちゃんとのやりとりが
可笑しくてたまらないです。
でも、そのうち「ぞなもし」という方言にも
読んでる方も慣れてきたのか、
とても優しい雰囲気につつまれる感じになります。

そんな中で、月給をあげてくれるという話を
坊っちゃんが断るというところで、下宿のお婆ちゃんが
そんなことを言っちゃいかん云々と諭す場面があるのです。
ここがですね〜、昔の自分とちょっと重なる記憶があって、
なんかとても印象深い場面なのですよ。
ふんふん、自分も若かったなぁ〜なんてね。

表紙のモデルは大島優子さんですが、
自分の描く坊っちゃんの作品イメージとは
ちょっと違うかな。


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坊っちゃん
夏目漱石
ぶんか社 2009年