読了。
丁度、漱石先生絡みの本を続けて読み終えていたので
一緒にアップすることにしました。
まずは、短編集の「文鳥・夢十夜」。
実は、夢十夜を題材にした朗読鑑賞会が鎌倉であったので、
本書は、その予習のために手にとったものでした。
鑑賞会当日は、日の高いうちの屋外開催で大変暖かく、
ウッドベースの効果音もあったりで
大層気持ちのよいイベントでした。
ただ、夢十夜そのものは、どちらかというと
しんみりしたり、あるいは怖かったりする話があり
鑑賞会と読んだ印象とはまるで違ったものとなりました。
本書の中では、「文鳥」という作品が好きです。
縁側の陽当たりのよいところに鳥籠がおかれ
文鳥の可愛い足や嘴の細かい様子が繊細に描かれています。
一方で、小鳥は寒さに弱いことや、猫や烏に狙われやしないかと
余計な心配があたまをもたげ、少々じれったくもなりました。
他には、イギリス滞在中の霧のロンドンの話、
漱石先生といえば、胃腸が弱いことで知られていますが、
その病に伏せ苦しみながらもブツブツと不平不満を漏らす話が綴られています。
長編小説ではみられない、
私小説的な面白さが溢れる短編小説集でした。
もう一冊は、講演集です。
面白いのが、全編に渡り、講演の冒頭で
本当は講演を引き受ける気はなかっただの、
やむを得ずここまで来たなどと
まさに胃が痛いような口上を述べています。
多くの講演が収録されていますが、
大正三年の学習院での「私の個人主義」が秀逸でしょう。
教師という職業への疑問、ロンドンで自らの嚢(ふくろ)を
突き破る錐が見つからず、何のために書物を読むのかもわからない。
それで、どうしたかというと、文芸とは一歩離れて
「自己本位」という言葉を立証すべく、科学や哲学の思索に耽ったというのです。
漱石先生はこの自己本位という言葉を得て
大変強くなったと言っています。
霧のロンドンの中で道を見つけることができたと。
若い人に自らの道を積極的に追い求めるよう諭しています。
夏目漱石というと、「エゴ」というキーワードも
一緒に耳にすることがあります。
あまり聞き応えがよくないのですが、
この講演集を読むと、漱石先生の苦しみや
西洋文明に対して自己をいかにして確立したか、
講演ですからまさに肉声が聞こえそうで、
その考え方が手に取るようにわかります。
余談になりますが、漱石先生のお子さんは
茅ヶ崎に住んでおられ、
なんと自分の住まいの近くであったことがわかりました。
これも何かの縁かもしれません。
また、漱石作品を読みたいと思います。
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文鳥・夢十夜
夏目漱石
新潮社 2021年
漱石文明論集
三好行雄編
岩波書店 2019年
私も文鳥を飼っていて、この本を読みました。文鳥の描写が、美しすぎて、「は~、文豪が表現するとこうもなるものか」と大好きです。珊瑚の足、水晶の爪、水浴びの音、本当にその通りなんです。しかし、飼い方はアレですねー。
返信削除コメントありがとうございます。自分は文鳥を飼ったことがないのですが、慣れると手に乗ってきたりするということでかわいいですね。でも飼い方は難しいのか。。。
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