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2018年3月18日日曜日

読了メモ「夜と霧」ヴィクトール・E・フランクル



読了。

新訳版を読みました。といっても2002年版ですが。

ずっと、気になっていたタイトルと装丁。
きっと難しいんだろうなぁと敬遠気味だったことを
猛省しなければと思った一冊です。
学生の頃に読んでおきたかったとも思う。
読んだ方はきっと多いはず。

原題は「或る心理学者の収容所体験」
ナチの強制収容所に収監された心理学者である著者がつづる、
人間の尊厳、人間にとっての希望とは、過去とは未来とは。
想像を絶する収容所での生活。それはきっと生活とは言えないだろう。
悪夢にうなされる仲間を起こそうとして、起こさないことにした。
現実より悪夢をみている方がまだましだからだ。

人はこの世に何にも残されていなくても
その有無が実際にはどうなっているかわからなくとも
至福の境地に一瞬でもなれることを読んでいて思い知らされる。
それは一体何だと思いますか。
そして、強制収容所で全てを奪われても、与えられた環境で
いかにふるまうかという人間としての最後の自由は奪えないのだ。

また、その傷は深い。
ようやく休戦となって収容所の門が解放されても
被収監者たちの心の中には嬉しさがわきあがってこない。


もう4年ほど前になるが
「戦争における「人殺し」の心理学」
という本を読んだことがあった。
こちらのヘビーな内容も一緒に思い出す。


もう二度と繰り返してはならないことにかわりはない。


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夜と霧
ヴィクトール・E・フランクル
池田香代子 訳
みすず書房 20012年



2018年3月12日月曜日

読了メモ「津 軽」太宰 治 「こころ」夏目漱石



読了。

タイプの違う文豪作品を二冊続けて読みました。

まずは、太宰 治の「津軽」。
実は初めて読んだのですが、
今まで持ってた太宰感がふっとんでしまいました。
途中で吹き出してしまうようなところもあったりして。
彼の故郷である津軽は、
グレーで曇っていて、どことなく寒くてという
寂寥感をいつもイメージして持ってしまっていたのですが、
故郷にいる知り合いを訪ね、知己に会い、歓迎され、
ペンネームでなく本名で呼ばれ、
東京の気障ったらしいところを互いに笑い合う。
歳を重ねるごとに故郷は、京都よりも奈良よりも
どんな都よりも素晴らしくなっていくという語りが印象的でした。

もう一つは、夏目漱石の「こころ」。
ちなみに、昨年読んだ初期三部作と同じ装丁の文庫を探してみました。
こちらは再読です。
といっても、以前読んだのは中学生の頃か。もう40年も経つ。
生意気にも中学生の時によく読んだなぁと。
たぶん半分以上わかってなかったんじゃないかとか。
恋愛が絡んで自殺におよぶ話だったよな程度くらいにしか覚えていなかったし。
先生という存在の大きさ、友人との心の通い、そして自己。
主人公のうちなる、それこそ心のひだが揺れ動く様は
読んでいて気持ちが悪くなる時もあった。
それほどに丁寧に、真意をついて書かれているのだと思う。

津軽は自分にとってはとても新鮮だったし、
こころはあらためて重鎮な作品だった。
今度はちょっと変わったのを読もうかな。

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津軽
太宰 治
未知谷 2006年

こゝろ
夏目漱石
角川書店 2014年