2024年は、こちらにもアップします。

2021年4月25日日曜日

読了メモ「洋食屋から歩いて5分」片岡義男


読了。

書き下ろしもあれば、
雑誌掲載されていたものもある、
片岡義男さんのエッセイ集。
なので、長さもばらばら。
短いお話もあれば、十数ページになるものも。

特に、前半はコーヒーの話が多い。
冬のコーヒーの暖かさ、
一口目の時のコーヒーの香り、
小さな非日常体験をさせてくれるコーヒー、
神保町でのコーヒーのハシゴ。
いずれも、片岡さんの小説に少なからず
携わっているコーヒーたちのお話。

料理のお話も。
料理本のレシピの一行を並べてみると
詩ができると書いてあったけど本当かな。
幕内弁当の栗きんとんと蒲鉾の置かれ方の蘊蓄が、
小説のタイトルになったこともあったとか。
そして、居酒屋には、なぜにこうもメニューが多いのか。
そういえば不思議ですね。

子どもの頃に、初めて素麺や雲呑を食べた時の感動。
食すものの味のベースが全て醤油であるとの気づき。
廃業することになった行きつけの食堂から、
湯麺の店頭展示サンプルを値札ごともらった時の嬉しさ。
真夏、喉がカラカラの時に飲むコップ一杯の水。

どのお話も、街での喫茶店での思い出話や
美味しそうなメニュー、ちょっとした出来事のお話で
とても穏やかな時間を過ごすことができる一冊です。

お時間のある時にぜひ。

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洋食屋から歩いて5分
片岡義男
東京書籍 2012年

2021年4月20日火曜日

読了メモ「ステラと未来」種田陽平・野山 伸


読了。

久しぶりに児童向け図書。SFでもあります。

児童図書とはいっても、内容はどことなく切なく、
新しい未来性もあるけれど、寂しさもある。

主な登場人物は、女の子と男の子。
二人は、別々に育てられ、
ある場所で出会うことになるけれど、
そこには、二人しかいない。

ちょっと話の時間を戻しますが、
二人とも親がいることはいるが、
女の子にはママ型のロボット
男の子にはパパ型のロボットがいて、
ある年齢に達すると
親ロボットの元を離れて旅立たなければならない。

子どもが自ら旅立つことを祝う親ロボットは
自分の体の中から「球体」状の物体を抜き取り子どもに授ける。
その物体が二人を導く行き着く先には、
二人の名付け親が待っている。
この親はロボットではないようですが、普通の人間とも違う感じ。

名付け親によれば、
自分の過去を知りたければ教えてあげる、
他にも同じような仲間がどこかにいるとも言う。
そして、まもなく自分は死を迎えることを二人に告げる。

最後は。。。。。。


とても不思議なお話です。

大人になってから読むと
こんなお話を子どもに聞かせてわかるのかな、
良いのかななんて思っちゃうけれど、
多感な子どもたちは
いろんな想いを浮かべて
このお話を聞くことでしょう。

表紙のステラの潤んだ顔が全てを語っているような気がしてなりません。
そう、女の子の名前がステラちゃん、男の子が未来くんです。

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ステラと未来
種田陽平・野山 伸
講談社 2015年 

2021年4月13日火曜日

読了メモ「種の起源」上・下 チャールズ・ダーウィン



読了。

皆さんもよくご存知の本じゃないでしょうか。
世界史でも習いましたね。

自分は子どもの頃から生物が好きで、進化などに興味があったので
世界中を探検して、進化論を世に説くチャールズ・ダーウィンに
とっても憧れていて、尊敬してました。
そういう子どもだったんです。

でも、学生時代、種の起源を読むのを何回挫折したことか。
岩波文庫の上下巻を揃えて、何度か挑んだのですが
その都度、途中で読まなくなってしまうのでした。
そんなこんなで幾星霜。
光文社から新訳版が出ているのを知って
今度こそはと再チャレンジして
この度、読破することができました。

ダーウィンといえば、ガラパゴス諸島や進化論などの
キーワードが浮かびますが、本書には
ガラパゴス諸島がでてくるのは、2度か3度程度で
有名なゾウガメのことなんかは一度も出てきません。
また、ダーウィンは、単に進化を説いているのではなく
個々の生物は、利益によってのみ、その利益のためにのみ作用するという
「自然淘汰」いう自説を何度も何度も何度も繰り返しています。
ただ、その自然淘汰はほんの少しづつしか前進せず、
その途中段階の地質学的証拠が殆ど見つかっていないという
自説の論拠の弱点を明らかにしつつも
その点をリカバリーする議論を展開し、
当時、宗教的にも席巻していた
創造主論を徹底して論破していきます。

また、生物の地理的分布の広がりについては
大陸移動説よりも、氷河期における生物自身の移動が多いこと
物理的環境よりも、生物間同士の関係性によって、
異なる地域で、類似した習性を持つ種類が存在することなど
壮大かつ繊細なスケールな話もありました。

意外だったのはダーウィン一人だけでなく
数多くの科学者やナチュラリストが
自然淘汰論をサポートするような
理論展開や実験観察を行っていることも知ることができました。

とにかく、ダーウィンの「熱意」をまざまざと
見せつけられる本でした。
子どもの頃から好きだった憧れの本書を読了することができて
本当によかったです。

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種の起源 上・下
チャールズ・ダーウィン 渡辺政隆訳
光文社 2020年