2024年は、こちらにもアップします。

2016年5月31日火曜日

読了メモ「いじわるな天使」穂村 弘




 鎌倉ブックカーニバルの余韻に今も浸りながら 
 古くて新しいお話の世界をまだまだ散策してまいります。
 よろしくおつきあいくださいませ。



読了。

表紙の絵と本文の挿絵は、水丸さんです。
ほのぼのな絵とは似つかわしくない いじわるな話が満載。
なかにはブラックが過ぎる話もある。

著者は歌人でもある。だからかどうかわからないが、
ひとつひとつの話はほんの数ページながら、
読み終えた後の余韻を長く感じられる浸り感があります。

ショートショートと言えば星 新一を思い出すけれど
あちらはSFと称されますね。
こちらは、童話やファンタジーと言う感じでしょうか。
ただし、必ずしもハッピーエンドではありません。


いくつもお話があるけれど
一角獣の話とゼンマイ仕掛けの話が好きかな。

自分はもう角砂糖を飲み物に入れない人になってしまいましたが
この一角獣の話を読むと、ますます入れるのは遠慮しがちになって、
とそう言いながら、角砂糖をスプーンの上で
少しづつ溶かすような、それこそ いじのわるいことをしそう。

ゼンマイ仕掛けの話は命が有限であることを言っているのですけど
なんかそれが、手近なところでなんとかなるんじゃないかという
のりを見せるところが面白い。絶対に無理なんだけどね。


セイレーンという妖精の話も出てきます。
ウクレレの好きな方には、あれ?と思うかもしれませんね。
でも、あの信州長野の妖精と違って、
こっちのセイレーンはおっかないですよ。

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いじわるな天使
穂村 弘
アスペクト 2005年


2016年5月29日日曜日

今年も盛況でした! ブックカーニバル in カマクラ 2016



今年で4回目の参加となりました
ブックカーニバル in カマクラ 2016
天候にも恵まれ、多くのお客様で賑わいました。
お越しいただいたみなさま、ありがとうございました。

出店した会場は、去年と同じく第二会場の古民家スタジオ・イシワタリ
縁側のスペースで本を並べさせていただきました。


10時スタートで、最初のうちは、

 「あれ?お客さんの出足は鈍いかな?」

と思ったのですが、お昼前後あたりから人が増えだしてきました。

ウクレレなお友達や、仕事をご一緒したことのある先輩夫妻などにも会えました。
出店者側で知人をお迎えするのは、心が落ち着くし、
とってもとっても嬉しいものです。
本のお持ち帰りだけでなく、差し入れまでもいただいちゃいました。
ありがとうございました。

お客様のなかには、

 「バリエンさんでは3年連続で本をいただいているんです。
  本に入ってる、ひとことメモも とっといてあるんですよ。」

とおっしゃっていただいて、今回も2冊、お持ち帰りになりました。
いや〜これは感慨無量なお言葉でした。涙が出そうになりました。


いろいろと本を選んでは悩まれて、一度は会場を離れて、
でも、終了間際に急いで戻ってきて、

 「やっぱりこの本もください!」

とか、

 「あれ?さっき金井美恵子の本なかったでしたっけ?」
 「いや、あれはついさっき出ちゃいましたよ。」
 「え〜っ、失敗した〜、あの時、貰っておけばよかった」

など、こういうお客様とのやりとりも楽しみの一つではあります。



そして、恒例の打ち上げ。
会場に来ていただいたお客様、
実行委員やスタッフ、関係者の皆さんに感謝しつつ乾杯。
ビール、美味かった!




実は、去年の秋にも参加した小田原ブックマーケットでは、
朝に本の運搬に使ったスーツケースの車輪が壊れ、腕がちぎれそうな思いをしました。
今回は、ご覧のキャリアに乗っけて運搬。壊れないことを祈りました。
それと、自宅の部屋の積ん読も大変な状態になっていて、
机上の空きスペースもキーボードの幅くらいしかない状態にまでなっています。

なので、少しでも帰りは荷物を軽くしたい、減らしたいなぁと思っていたのです。



それも、おかげさまで軽くすることができました。
行きと帰りで荷物の重さが違う実感と喜びを一緒に噛み締めながら
家路についたのでした。

今回も参加することができて、本当によかったです。
実行委員代表のBooks Mobloの荘田さん はじめ皆さんありがとうございました。

また、面白い本をたくさん読んでいきたいと思います。


2016年5月24日火曜日

もうすぐ開催! ブックカーニバル in カマクラ 2016



2016年の開催も、今度の土曜日、5月28日とせまりました。


ご用とお急ぎでない方は、鎌倉が紫陽花で超大混雑になる直前に
散策ついでにいかがでしょうか。ぜし!!

ブックカーニバル in カマクラ2016
日時:5月28日(土) 10時〜夕方(古本市は16時で終了です)
場所:第一会場 由比ヶ浜公会堂
   第二会場 古民家スタジオ・イシワタリ
   第三会場 鎌倉市中央図書館

わたくしめは、今年も懲りずに
「バリエン」で古本市に素人参加いたします。
第二会場に出店いたしますです。
みなさまのお越しをお待ち申し上げております。

会場や近隣のお店でスタンプラリーのスタンプを集めると
特製エコバッグが今年ももらえるそうですよ。
帰りに古本や鎌倉土産を詰める袋が必要な貴方には必須のアイテムかと。

2016年5月19日木曜日

読了メモ「どれみそら 書いて創って歌って聴いて」阪田寛夫




読了。

まずは、こちらを。




著者で語り手は、この童謡を作詞した阪田寛夫。
聞き慣れた童謡の多くは、よく知られている通り
「ドレミソラ」でできてるんですよね。
ファとシがない、ヨナ抜きの五音でできている。

めだかの学校、カモメの水兵さん、桃太郎、うさぎとかめ、
童謡だけでなく、丘を越えて とか、箱根八里や鉄道唱歌も。
ググったらもっとでてくると思う。

本書は、作詞家で小説家でもある著者の童謡制作について
戦前の話からつづられる。
童謡を中心にいろいろな歌詞が載っていて
読みながら、鼻歌を歌いながら読むのも楽しい。


戦前の話の部分は、ちょっととっつきにくい。
やはり、戦後からの話がぐっと面白くなる。
弾むように話が進んで行く。
出てくる作曲家や、掲載されてる歌詞も知っているものがほとんど。
さっちゃんを作曲した大中 恩が中軸にくるが、
まど みちお と さっちゃんの歌詞にある「寂しいね」
について語るところは奥が深い。

いぬのおまわりさんやグッドバイを作詞した
佐藤義美の世界の話では、子どもをセンチメンタルにするのは
詩の精神に反するそうで、小学校二年生と三年生の間の
二年生半の心を持つ人が素晴らしい童謡をかけるのだそうです。
そんな心を今でも持っていそうな気がするけれど、
たぶんきっと違うのでしょうね。

後半に、♪更け行く秋の夜の「旅愁」と
♪兎追いしかの山の「故郷」の歌詞の比較があります。
共通するのは「ふるさと」ですが、
それぞれの歌詞の奥にあるものが、こんなにも違うのですね。
自分は、いわゆる帰省する「いなか」を持っていないので
この二つの歌の想いや感性に触れることができて嬉しかった。


本書には、それこそたくさんの歌詞が載っています。
おなじみの童謡はもちろん、そうでないものも。
メロディを思い浮かべながら読むのもよし
曲を知らずとも活字と行間を読むのもいいと思います。

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どれみそら 書いて創って歌って聴いて
阪田寛夫 聞き手 工藤直子
河出書房新社 1995年








2016年5月15日日曜日

川端康成とJimmyとZine



本日は異なる三つのイベントを拝見してきました。

まずは、東京ステーションギャラリーで開催の
川端康成コレクション 伝統とモダニズム
今更ながら、川端康成って最近の人なんですよね。
文豪というイメージや和服姿のモノクロ写真を見ているせいか
遠い明治時代の人と勘違いしそうになる。
展示の中で、TV–CM用に撮影されたビデオが流されていたり
映画「伊豆の踊子」を演じる吉永小百合との写真など
川端康成をもっと身近に感じさせる展示がありました。
ノーベル文学賞のメダルや賞状もありましたよ。これも必見です。
一方で、熱き想いを寄せた恋人である初代さんへのラブレターは
実際に読むこともできて、これはこれで自分の中での
川端康成像が変わっていきました。


2番目は、箱崎のギャラリーでの
I Love Jimmy!(ジミーに首ったけ♪)写真展2016
ジミーは「地味」のこと。
野ざらしの廃車や雨ざらしのポスト、夕陽を背にした有刺鉄線、
赤錆びた線路やペンキの剥げた壁などなど。
とても鮮やかとは言えない写真ばかりですが、
無言のメッセージがじわじわきそうなものばかりです。
総じてインパクトが強かったりで、やや食傷気味になるかもしれませんが
枚数も相当あって見ごたえがありました。
その中でも広い部屋か倉庫のようなところあった
前輪の壊れた自転車の写真が自分の印象に残っています。
こういう写真をみると写真をまた撮りに行きたくなりますね。


最後は、都立大学駅近くでのZineのイベント。
MOUNT ZINE 11
今日15日までの開催で、次はアメリカで開催してまた帰ってくるそうです。
こちらで活動されている方とは、小田原での本のイベントで知り合って
いつか会場に伺ってみたいと思っていたのでした。
ご挨拶の後、いろいろなZineをみてみると、フォトブックみたいなものも多く
もしかして自分でも作れるかな?なんて淡い期待を抱いたり。。。
すでに台湾などとZineを通じた交流をしているとかで
次はアメリカのポートランドでと聞いてなんとも素晴らしい限りです。
で、今回は読み物系と詩集のZineを2冊いただいてきました。

と、この週末も行き当たりばったりながら
なかなか中身が濃かったのでした。
 

2016年5月14日土曜日

読了メモ「ブラ男の気持ちがわかるかい?」北尾トロ



読了。

書店の棚で見つけた時の
「ジャケ買い」というか「タイトル買い」の
楽しくて嬉しい気持ちに久しぶりにさせてくれた一冊。
この表紙のインパクトは、
ウクレレ系の特定のクラスターにはご理解いただけるものと思う。


中身は週刊文春に連載されていたコラムを集めたもの。
コラムというより独り言に近いようなものもある。
自らボケて、ツッコンだりもしている。

もちろん、全編がブラ男の話ではない。
いわば、「おやじ」の悲哀な生態を綴っていて
 たしかめたい
 愛を探しに
 単独行動に打って出る
 ガラスの50代
 そして人生は続くのだ
と、45編ほどの話が5つに括られている。
ちなみに、ブラ男は単独行動に分類されている。

フォーカスのあたっているさまざまなおやじは、
自分も世代的にはドンピシャなわけで
もともと週刊誌のコラムであることもあってお気楽に読めるものの、
電車の中で読んでも油断は禁物。
ニヤニヤしたり、場合によっては
吹いてしまうのは必至で、実際、そうなりました。
まさに、このコラムに書いてあるようなおやじがここにもいると。


ただ、ほとんどの話に共通していて、素晴らしいなと思ったのは、
著者がチャレンジ精神旺盛なことである。
世であれやこれやと言われることや、少しでも気になったことには、
当のおやじである著者が果敢に挑戦し実際に体験し、
その結果としての実感が描かれている。説得力抜群である。
見習わなければならない。かといって、ブラジャーはしないが。


ちなみに、ブラ男のところで、
おもわず、あ〜と目を伏せてしまったのは
体が固いので、背中のホックをとめられず
奥さんにとめてもらって嘆かれたところ。。。

あとは、読んで楽しんでください。

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ブラ男の気持ちがわかるかい?
北尾トロ
文藝春秋 2014年






2016年5月12日木曜日

読了フォトブック vol.8



読了フォトブック vol.8 まできました。

見開きの右側に読んだ本の写真、
向かいの左側のページに、ひとこと読了メモを添えています。

デジタルカメラで撮った写真もそうですが、
PCやネットに読書記録を残していても
データが消滅することも考えられないわけでもないし
少しでもリアルな形で残しておければいいなと作っています。

1冊あたり、31冊載せられるので、
都合248冊分の勘定になります。

 そういえば、こんなの読んだんだっけ、
 そん時はこんなこと思ってたのか、
 また読んでみようかなぁ
 ありゃ、もう手元にないじゃん.....

検索性やスペース効率の観点では、デジタルデータにかないませんが
手前味噌ながら、パラパラめくってみるのが楽しいです。


2016年5月8日日曜日

読了メモ「昔、そこに森があった」飯田栄彦



読了。

約560ページにおよぶ長編物語。
四六判よりも微妙に大きく、
上下巻に分かれるでもないので本が重いw

舞台は北九州の農業高校。
そこへ小さな塾を経営している主人公が、
英語の非常勤講師として3学期から勤務することになるのだが、
なんと、そこの高校の門に生えている木のトンネルをくぐり抜けると
生徒はチンパンジー、ゴリラ、オランウータン、ニホンザル、
マントヒヒ、テナガザル、テングザル、マンドリルなどの猿に、
先生もタヌキ、カメレオン、スカンク、クロヒョウ、キリン、
クマ、トラ、バク、ドーベルマン、そしてブタなどの動物に姿を変えてしまう。
という奇想天外な設定から始まる。
ちなみに、主人公は髭面だったので、ヒゲを生やしたブタになっている。

変わったのは姿形だけで、中身は人間のまま。
読んでいると不思議なもので、動物であることを意識しなくなる。
つまり、外見が動物であろうと実は関係ないということに気づく。
ということは、もっと別なところに物語の狙いはあるようです。


途中、物語は、主人公が木と会話をすることで
新たな展開が別次元で始まり、全く異なる物語を並行して読むことになります。
こちらの話は、大昔の人間 対 自然という軸で語られ
自然の恐ろしいほどの厳しさを眼前に突きつけられます。
その自然に立ち向かい成長していく主人公が
後半では、自然を脅かす人間に対して、
動物たちと一緒になって戦い森を守ることになります。

そして最後は、動物に変身する農業高校の生徒や先生の話と
この異次元の人間 対 自然の話がクロスして終焉を迎えます。


農業高校での話は、先生や生徒の間で交わされる勉強や進路、
恋人、結婚などに広がり、その話のアクセントとして
主人公の英語の授業で様々な「絵本」が使われます。
実在する絵本のタイトルが出てくるので
これもチェックしていくと面白いと思います。
例えば、
「ゆきだるま」、「はるにれ」、「あおくんときいろちゃん」、
「しろいうさぎとくろいうさぎ」、「ぼちぼちいこか」、
「ぼくどこからきたの?」、「じごくのそうべい」

それと、井上ひさしの小説「青葉繁れる」も引用されていました。


もともと、1985年に出版された児童文学ですが
大人が読んでも十分楽しめますよ。

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昔、そこに森があった
飯田栄彦
理論社 2010年



2016年5月6日金曜日

コロムビア GP-3をゲット!


コロンビアではありません。
コロムビアです。

ずっと探していたポータブルレコードプレーヤー
日本コロムビアのGP-3を
ようやく見つけて、ゲットすることができました。

最近、アナログレコードを再生して
デジタルに変換するターンテーブルが流行ってるみたいですね。

でも、自分にはそこまで必要はないです。
ソノシートがそこそこ再生できて
内臓スピーカーで手軽に聴ければ十分なのです。
そんなチープな感じがまたよいです。

とりあえず、ソノシートをかけてみました。
回転数は33。名曲です!

もしかしたら動画、消されちゃうかな。。。。

2016年5月1日日曜日

読了メモ「「悪」と戦う」高橋源一郎



読了。

タイトルの「悪」は「あく」です
「わる」と読んでしまうと
いきおい直感的になって、なんか雑巾っぽい感じがしてしまう。
あっ、表紙にふりがながちゃんとふってありますね。
この写真を載せて今気がついた。。。


著者は小説の中で、時間を越えながら
人間にとっての「悪」を説いていきます。
反社会的行為や法に触れるようなことだけではありません。
外見、心、社会、交友関係、親兄弟、愛する人、夢、、、
人間にとって、「悪」はいろいろな場面の裏返しです。
また、ひとりひとりの価値観が違えば「悪」も違う。
正しい悪に対峙した自分は悪なのかもしれないと
哲学みたいな話になってきます。

後半、ややはちゃめちゃなところもあって
読んでる自分の位置を見失いそうになりますが
それだけ、「悪」は私たちの周りにあるのです。

で、思うに、最も重い「悪」は
自ら命を絶つことではないかと。
本書では、それを想わせる描写が何度か出てきます。
ただ、私たちが俗に言う自殺という概念だけではなさそうです。
例えば、こんな一文がありました。

 「信じられないからなにもしないって、まずいような気がする。
  マホさんの言うことがほんとなら、ぼくは、
  「悪」に手を貸して、世界を終わらせる共犯になるってことじゃん。」


本書の主な登場人物は、お父さんとお母さん、
その子ども二人と友達の女の子です。
女の子のお母さんも最初と最後に出てきますが
自分は、この女の子のお母さんの言動が、
この小説のトーンを絶妙に設定する役目をしてるという気がします。


著者の本を読むといつも思います。
あ〜 自分って文系なんだなって。
自称理系の方も是非、読んでみてください。

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「悪」と戦う
高橋源一郎
河出書房新社 2010年