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2016年5月8日日曜日

読了メモ「昔、そこに森があった」飯田栄彦



読了。

約560ページにおよぶ長編物語。
四六判よりも微妙に大きく、
上下巻に分かれるでもないので本が重いw

舞台は北九州の農業高校。
そこへ小さな塾を経営している主人公が、
英語の非常勤講師として3学期から勤務することになるのだが、
なんと、そこの高校の門に生えている木のトンネルをくぐり抜けると
生徒はチンパンジー、ゴリラ、オランウータン、ニホンザル、
マントヒヒ、テナガザル、テングザル、マンドリルなどの猿に、
先生もタヌキ、カメレオン、スカンク、クロヒョウ、キリン、
クマ、トラ、バク、ドーベルマン、そしてブタなどの動物に姿を変えてしまう。
という奇想天外な設定から始まる。
ちなみに、主人公は髭面だったので、ヒゲを生やしたブタになっている。

変わったのは姿形だけで、中身は人間のまま。
読んでいると不思議なもので、動物であることを意識しなくなる。
つまり、外見が動物であろうと実は関係ないということに気づく。
ということは、もっと別なところに物語の狙いはあるようです。


途中、物語は、主人公が木と会話をすることで
新たな展開が別次元で始まり、全く異なる物語を並行して読むことになります。
こちらの話は、大昔の人間 対 自然という軸で語られ
自然の恐ろしいほどの厳しさを眼前に突きつけられます。
その自然に立ち向かい成長していく主人公が
後半では、自然を脅かす人間に対して、
動物たちと一緒になって戦い森を守ることになります。

そして最後は、動物に変身する農業高校の生徒や先生の話と
この異次元の人間 対 自然の話がクロスして終焉を迎えます。


農業高校での話は、先生や生徒の間で交わされる勉強や進路、
恋人、結婚などに広がり、その話のアクセントとして
主人公の英語の授業で様々な「絵本」が使われます。
実在する絵本のタイトルが出てくるので
これもチェックしていくと面白いと思います。
例えば、
「ゆきだるま」、「はるにれ」、「あおくんときいろちゃん」、
「しろいうさぎとくろいうさぎ」、「ぼちぼちいこか」、
「ぼくどこからきたの?」、「じごくのそうべい」

それと、井上ひさしの小説「青葉繁れる」も引用されていました。


もともと、1985年に出版された児童文学ですが
大人が読んでも十分楽しめますよ。

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昔、そこに森があった
飯田栄彦
理論社 2010年



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