2024年は、こちらにもアップします。

2021年5月28日金曜日

読了メモ「天体議会」長野まゆみ




読了。

なんの影響か、なにが要因かわからないが、
ちょっとここのところ、幻想的な小説にあたり続けている。

今回も五章からなるSFファンタジー小説。
イラストも著者の長野まゆみさんが描いている。

不思議な小説だ。
宮沢賢治とファイナルファンタジーの世界を
掛け合わせたような世界観とでも表現したらいいだろうか。
銅貨、藍生、水蓮、烏貝、旗幟。。。
出てくる登場人物は、このような奇妙な名前ばかり。
そして、自動人形という謎の美少年。
全員、少年。
女の子は一人も出てこない。

表現や描写も飛んでいる。
例えば、

「アルミニウム青銅の美しい黄金いろをした機体」

「彼の指は白磁でできた人形の指そっくりで、どれも細く、
 透徹るような乳白色をしていた」

ここでは「黄金」を「きん」、「白磁」を「びすく」と
ルビをふって読ませている。

同様に「母」は「バービィ」、「檸檬」は「シトロン」。
移動には、「自動車(ミシュリン)」よりも
「蝶凧(パピイ)」という乗り物を使うという。

とにかく、独特で創造的な冒険の世界にどっぷりと浸ることができるが
没入するには、自分は少々時間がかかった。
それに、どこかBL的な雰囲気が遠くの方でしないでもない。

幻想的な世界に入ってみたい方には
一度、ページをめくってみてはいかがだろうか。

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天体議会
長野まゆみ
河出書房新社 1991年

※本書は絶版のようです。



2021年5月21日金曜日

読了メモ「たんぽぽ娘」ロバート・F・ヤング




読了。

奥付には「奇想コレクション」とある。
SFファンタジー短編集、全部で13篇。

装丁の帯には、「ビブリア古書堂の事件手帖」にも登場とあった。
当該の書籍を読んでいないのでなんとも言えないが
映画では見たけれど、本作品が出てきたか記憶は定かではない。

タイトルにもなっている「たんぽぽ娘」は、
SF定番のタイムトラベルのお話。

山小屋に一人で休暇を過ごすことになった
マークが、一人の少女に出会う。
少女といっても21歳なのだが
とても綺麗で健やかで溌剌として
着ている洋服もこの世の生地とは思えない素敵な装いだった。
マークはすっかり彼女の虜になってしまうが、
彼女は、240年後の未来から来たという。

未来の人間が過去のものに触れることは
未来の事象の存在に影響を与えるので禁止されており
時間警察がパトロールしているという話がある一方で、
未来の人間が過去と関わることで、
既にその未来の人間は過去のものになるので
問題はないという議論が未来ではなされているらしい。
ちょっと話がこんがらがりそうになるけれど
落ち着いて読めばわかりますよ。

で、結末は、ドーンと愛の溢れる結末になります。

他にも、宇宙クジラと交流する話や
過去を保存してある部屋のある扉を開ける話、
スターウォーズを彷彿とさせる勇敢な女性を捕まえる宇宙戦争の話など
ファンタジックなSFの世界が広がります。

いずれも読みやすいお話なので
大人だけでなく、SF好きの中学生や高校生だったら
十分に楽しめる一冊だと思います。

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たんぽぽ娘
ロバート・F・ヤング 伊藤典夫編
河出書房新社 2013年

※下記は文庫本でのご案内になります。

2021年5月17日月曜日

読了メモ「ドグラ・マグラ」夢野久作



読了。

日本の三大奇書のうちの一冊。
『わけのわからぬ小説。読むと精神に異常をきたす。』と
江戸川乱歩に言わしめた作品です。

いつかは読んでみたいと思っていましたが
いやはや、長かった。
上下二段書きで500ページになる大作です。

一応、探偵小説なるもののようですが、
自分の記憶では、探偵なんて出てきやしません。
文体やら、時間軸の前後関係やら入り乱れてしまって
読み込むほどに本書の四次元の世界に入り込んでいきます。

精神科病棟で隔離されている主人公の
生前からの家系の変異と殺人事件、
隣室にいる泣き叫ぶ絶世の美少女と言われる許嫁、
主治医の精神科教授、またその主治医と対抗する法医学博士、
登場人物はそれほど多くはないのですが、
とにかく、話が過去や現在に大きく揺れて
文調も、はぁ〜スチャラカチャカポコ♪と言う
お囃子調で描かれた博士論文が長く続いたり、
そうかと思えば、淡々と話が進んでいく様は
確かに、気を落ち着かせて読まないと
何が何だかという具合になってしまいます。

さすがに後半は、謎解きが始まり、
ここで、え〜っ!そうなの!!今までの話はなんだったんだ!!!
と驚きを抑えつつページを捲る始末です。

幸い精神がおかしくなることはありませんでしたが
非日常にトリップしたい貴方には、
是非ともトライしていただきたい一冊です。
不要不急な外出自粛のご時世にいかがでしょうか。

最後に裏表紙の注意書きを添えておきます。

『本書を一読後、この奇怪な作品世界に毒されて
 奇行に走られぬよう、読者は充分にご注意いただきたい。』


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ドグラ・マグラ
夢野久作
早川書房 2007年第四版

2021年5月9日日曜日

読了メモ「本陣殺人事件」横溝正史



読了。

金田一耕助シリーズといえば、
市川崑監督、金田一役が石坂浩二さんの映画が大好きですが、
本作品は、お二人の映画にはならなかった作品です。
名作という評価の高い作品と聞いていたけど
古谷一行さんが金田一役で映画かテレビでやったかな。

ミステリーなので、内容は詳しくは書きませんが
密室殺人なのですよ。雪なんかも降っちゃったりして。
で、やっぱりというか琴がトリックに使われちゃったりするんです。
現場であるお屋敷の書斎には、世界中の探偵小説がいっぱい揃っているなど
トリックや謎解きの雰囲気を一層盛り上げてくれます。
警察サイドは磯川警部が出てきます。
「悪魔の手毬唄」では、若山富三郎さんが演じてましたね。

本書は、1975年発刊と古いですが
「黒猫亭事件」という話との二本立てです。
こっちは、顔のない屍体がテーマになっています。
加害者と被害者が入れ違いになってしまうというやつですね。
おっと、こちらもここまでにしておきましょう。

本作品は、丁度、獄門島事件の直後という設定になっていて、
金田一さんも、あの忌まわしい事件を解決したということで
結構、名前が売れているという設定も面白いです。

横溝正史さんの作品は、それこそたくさんあって
まだまだ読んでいないのがたくさんあります。
今年は、ミステリーものも読んでいこうかな。

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本陣殺人事件
横溝正史
東京文芸社 1975年

※上記の書籍は絶版のため、
下記のご案内は文庫本になります。

2021年5月2日日曜日

読了メモ「水の巡礼」田口ランディ 森 豊/写真


読了。

田口ランディさんの本は何冊か読んでますが、
本書は、どちらかというとスピリチュアルな分野のお話です。
森 豊さんの幻想的な写真を交えて、
水と魂のつながり、芸能と水の関係などが綴られます。

ランディさんの人生にとっての
ターニングポイントは屋久島でした。
以前、ランディさんが書かれた屋久島の本も読みました
屋久島に出会って作家になったと仰っているほどです。
屋久島はひと月に三十五日も雨が降る
と言われるくらい多量の水を抱える島です。
透明な水とエメラルドの苔。
空気を吸うと肺が浄化され、雨が降ると森が歌うんだそうです。

そして、その水と魂は似ているのだそうです。
ランディさんは広島に訪れた時、
市内ではなく、山に登ったそうです。
平和公園は暑くて、魂はいない、
神様を象徴するものが市内にはないそうです。
山にあるお寺のそばには清水や滝があって、
魂が休まるホッとするところのようです。

ハワイ原住民の伝説のサーファーによれば、
世界は海によって結ばれた水の中の島々なのですと。
水は世界をつなぐものでもあるようです。

お話は10個あって、その中では
 熊本 水と共鳴する魂
 鹿島神宮と要石の謎
の話が好きかな。

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水の巡礼
田口ランディ 森 豊/写真
角川書店 2006年