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2021年12月12日日曜日

読了メモ「国家(上・下)」プラトン





読了。

今年の初めにも、プラトンを読んだ。
年の瀬にも読んだということで
今年は、プラトンに始まり、プラトンに終わるか。

本書は、ソクラテスと弟子・友人たちによる
例によっての一問一答形式での弁論で、国家について語っている。

国家という大きな体制や仕組みという
マクロ的な視点は後半に少し出てくるが、
あくまで、市井の人々や、例えば農夫はどう考えるかという
常に目線は庶民の高さにある。

そして、全編を通じて問われているのは、

 「正義」とは何か。

ということ。
立場や職業が違えば、捉え方も違うかもしれない。
ちなみに、
 
 「正義」とは、それぞれのものの使用にあたっては無用、
 不要にあたっては有用なもの、ということになるわけだね(上p39)


と、これだけでは分かりにくい。
長くなるので、詳細は本書にゆずるが、
最初の結論としては、正義について何も我々は知らない
ということに落ち着くようだ。いわゆる「無知の知」であろうか。

最初のうち、友人はソクラテスの言い分や素行が気に入らなく、
反論や憎まれ口をたたくが、ソクラテスはそれを認めた上で
自分の行いや言論が道理にかなっていることを説く。
そして、議論が進むにつれて、相手は素直になり
ソクラテスの話に耳を傾け、真摯に認めて行くようになる。

国家の統治者にあたるのであろう「守護者」という表現が出てくる。
市民を守る人という意味合いが強いと思う。
その守護者になるためにはどうすればよいのか。
守護者は私有財産を一切所有してはならず、隠し住居や宝蔵ももってはならない。
暮らしの糧は、ちょうど一年間の暮らしに過不足のない分だけを受け取ること。

また、男と女は平等でかつ共同で事にあたり、
貧富の差がある子供の平等性についても説いています。
そして、法というものは、国の中の一部の種族だけが
特別に幸福になるということではなく、
また、すべての教育は平等に課せられることだと。
そして、音楽や文芸については、ちょっと長くなるが下記に引用する。

 音楽や文芸による教育は、決定的に重要なのではないか。
 なぜならば、リズムと調べというものは、
 何にもまして魂の内奥へと深くしみこんで行き、
 何にもまして力強く魂をつかむものなのであって、
 人が正しく育てられる場合には、
 気品ある優美さをもたらしてその人を気品ある人間に形づくり、
 そうでない場合には反対の人間にするのだから。(上p241)

最後に国家・国政は、時々刻々変化を遂げて行くが、
国家の病として最悪なものとして
「僭主独裁性」を批判しています。

 けっして、名誉や金銭や権力の誘惑によって
 さらにはまた、詩の誘惑によってそそのかされて、
 正義をはじめその他の徳性をなおざりにするようなことが
 あってはならないのだ。(下p379)

真の哲学者とは、真実を見ることを愛する人としながら
哲学の素質に値する国家は、残念ながら
ギリシア時代ではまだ存在しないという。
未来に期待を寄せているのだろうか。

ちなみにですが、守護者は酒は飲んでも
酔っ払ってはいけないそうです。

大丈夫ですか。現代の守護者のみなさま。
2400年も昔の人からこんなこと言われてますよ。

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国家(上・下)
プラトン 藤沢令夫訳
岩波書店 2019年



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