2021年12月21日火曜日

読了メモ「海と毒薬」遠藤周作




読了。

恐ろしい話です。
人の生命とは、命の尊厳とは。。。
戦争は本当になにもかも狂わしてしまうのでしょうか。

本書は小説でフィクションなのですが、背筋がぞっとします。
第二次世界大戦末期の日本人とは
どういう人間だったのか。異常者だったのでしょうか。

よく、日本の戦争映画を観たり戦争物を読むと
こんなフレーズを耳にしたことありませんか。

 「生きて虜囚の辱めを受けず」

日本軍人、あるいは民間人においても、
人命軽視の議論のもとにもなった一文。
立場が一転して、米国人捕虜に対して、
日本軍はどのような待遇を施していたのか。

ある病棟で医師は、懸命に一人の結核患者の命を助けようとする。
しかし、患者は助かる術もなく姿を消して行く。
あらゆる手をつくしてもどうにもならない悔しさ虚しさに
打ちひしがれているところへ
秘密裏に捕虜に対する「ある司令」の話がおりてくる。

病院内では安楽死について激しい議論が交わされてもいた。

 「死ぬことが決まっていても、殺す権利は誰にもありませんよ。
 神さまがこわくないのですか。あなたは神さまの罰を信じないのですか」(p113)

医師の複雑な心境を垣間見る描写もあった。

 「病室で誰かが死ぬ。親や兄妹が泣いている。
 ぼくは彼等の前で気の毒そうな表情をする。
 けれども一歩、廊下に出た時、その光景はもう心にはない」(p142)


ある大義名分の下に、多くの人命を救うために
この捕虜たちは「生かされる」として
手術室には、処置をする医師や看護婦長だけでなく、
将校たちが後ろから遠巻きに覗き込んでいたりする。
字面を追うだけで、むっとする場面だ。

もう勘弁してください。
でも、一度は読んでみてほしい。

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海と毒薬
遠藤周作
新潮社 2016年

※下記は講談社文庫でのご案内です。






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