読了。
2004年 第31回メフィスト賞受賞作。文庫上下合わせて1,100ページ以上の学園長編ミステリー。
舞台は屈指の進学校、私立青南学院高校。まず本編に入る前の冒頭でいきなり不安を掻き立てられ、それがこの小説の全てを物語っているように思える。
「落ちる、という声が本当にしていたかどうか。
それは、今となってはもうよく思い出せない。」(上 p13)
登場人物は、同校の3年生で各クラスで委員をしていたり、生徒会で活躍する8人の生徒たち。彼らが雪の降る朝に登校してくるのだが、この時点ですでに様子がおかしい。街に人がいないのだ。登校しても学校には下級生も先生も誰もいない。8人だけだ。さらには、なぜか校舎の扉に鍵がかかって一人として外に出られなくなってしまう。破天荒ながら生徒たちから支持されている若い先生がしかけたドッキリだろうと高を括るがどうも違うようだ。そして追い討ちをかけるように不思議なことが発覚する。校舎は3階建てのはずなのに4階と5階が窓から見える。でも昇りの階段はない。
冒頭の書き出しで想像がつくとおり、この高校では校舎屋上からの投身自殺が起きていた。秋の学園祭の最終日の事件だった。しかし、これも不思議なことだが、8人の生徒たちはその自殺した人のことをどうしても思い出せない。たった数ヶ月前のことなのに。。。。
中盤から生徒ひとりひとりに不気味な犯人の手が伸びてくる。真っ白い雪と赤い鮮血の描写は読んでいて背筋がぞくそくしてくる。異次元の世界観にも関わらず、辻村さんの作品は本当に読みやすい。読んでる自分も同じ校舎の中にいるような感じがして生徒たちと一緒になって頭を巡らす。また、話の鍵を握る女子生徒の名前は「辻村深月」で、作者と同じ名前。なおのこと話の世界にのめり込みやすくなる。
犯人がわかって異次元世界の謎も解けたあと、さらに追っかけでもうひと展開があったりと最後まで楽しませてくれます。
「落ちる」という一言が最後まで頭から離れない。なんとも切ないホラーミステリーでした。
「冷たい校舎の時は止まる」
辻村深月 作
講談社 2007年8月刊
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