読了。
第64代/65代内閣総理大臣 田中角榮氏が著した当時91万部の大ベストセラー。一度、読んでみたいなぁと思っていたところ、復刻版が出ていたのを知り入手してみた。
発刊されたのは、昭和42年(1972年)のこと。あさま山荘事件、沖縄返還などがあり、翌年には第一次オイルショックがおきるという時代。今からもう50年以上前。そんな時代に、角榮氏が訴えたのは、都市の過密と農村の過疎の解消。この言葉が何度も本書には登場する。人と経済の流れを変える、都市改造と地域開発ということに多くのページを割いている。ただ、いわゆる国土を掘り返すような話ばかりではない。ソメイヨシノの植生が衰えてきていることを例にあげた公害問題・環境保護に向けた提言、平和と国民の福祉や国家間の協調に日本の力を活用していくこと、そして今のネットワーク社会を彷彿とさせる記述もあり、情報通信ネットワークインフラの整備を進めることの重要性も具体例をあげながら説かれていた。
読んでいてさすがだなと思ったのは、表だった強引とも言える政策を述べたあとで、その影に隠れてしまうような側面にも必ず光を当てて取り上げ、もれ無く隅々まで政策を行き届かせようとし、日本をよくしたいという意思が感じられたこと。表現の一部に古いところはあるが、その「筆」の圧倒的な説得力は今の時代に読んでも健在だ。
角榮氏といえば、今太閤と揶揄され、ロッキード事件で逮捕収監されたあとも目白の闇将軍と呼ばれたりしたが、あのダミ声でブルドーザーのような迫力を持った演説をまた聞いてみたくなった。
なお、本書の復刻にあたって冒頭の添書きを真紀子氏が書かれている。こちらも併せてご一読を。
「日本列島改造論 復刻版」
田中角榮 著
日刊工業新聞社 2023年3月
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