2024年12月8日日曜日

読了メモ「アメリカ映画の文化副読本」渡辺将人 著

 

読了。

「アメリカ映画の文化副読本」
 渡辺将人 著
 日本経済新聞出版社 2024年1月

アメリカのいろいろな映画作品を通してみるアメリカ社会、文化、国民性、習慣などを綴った解説本。

切り口は、「都市と地域」「社交と恋愛」「教育と学歴」「信仰と対抗文化」「人種と民族」「政治と権力」「職業とキャリア」の七つ。冒頭は国内の地政学から話は始まる。南部と北部、東海岸と西海岸、州と連邦に代表されるように、これらの地域の特性はアメリカ映画の中では作品情報として重要な重きが置かれている。もっと言うと、ニューヨーク、西海岸、それ以外に分けられるという。また、ここに国外の要素がからんできてもそれはエキゾチックなアクセサリーの扱いとなる。つまり、アメリカ映画はこんなに世界中で消費されていながら、実は極めて内向きな面白さを詰め込んでいると評している。
ほかにもアメリカ人の国民性や習慣、文化に映画を通じてあらためて気づかされる。アメリカでは衣食住のうち何に重きを置いているのか。学園ドラマではなぜ廊下にロッカーがズラリと並んでいるシーンが多いのか。言語や宗教まで独自のルーツをアメリカに持ち込む異質な集団とはいったい何なのか。それとアメリカ国民のライフスタイルには政治性が反映され、同じ富裕層でも民主党支持層と共和党支持層が好む車には明らかに違いがあるという。きっと、これらはアメリカに居住していれば自ずと肌感覚でわかるコモンセンスなのだろう。翻って日本についてもそういう視点で国民性や文化・習慣を紐解いてみるのも面白いと思う。ただ、それはきっと日本国内にいてはわからないのだろう。一旦、離れてみるという境地の大切さを思い起こさせる読み物でもあった。

各章では解説テーマに沿ったアメリカ映画数本を紹介するコーナーがあり、映画好きにはなかなか美味しい一冊に仕上がっている。娯楽として楽しんでいた映画を文化人類学的なアプローチで俯瞰して観ることがあっても面白いかもしれない。

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