読了。
「心臓の力 休めない臓器はなぜ「それ」を宿したのか」
柿沼由彦著
講談社 2015年
一度、しっかりと心臓に関する本は読んでみたいと思っていた。とはいえ専門書などは読めるはずもないので、まずはブルーバックスから。
わかりきっていることだが、私たちの心臓は私たちが生きている限り休むことなく動き続けている。一日で10万回の収縮と拡張を繰り返す。また、血液を送り出す力は水柱に換算すると1.77メートルまで吹き上げる力だという。本書の冒頭ではそれらを踏まえた上で気付かされたことがある。
過酷な重労働を強いられる心臓は、必然的に多くのエネルギーを消費する一方で、
エネルギーと共に産出される活性酸素という猛毒をあびつづけている。
それは心臓にとっては致命的なダメージとなるはずだが、
実際には心臓が活動を停止することがないのは、
心臓自身にみずからを癒す能力が備わっているからである。(p5)
わかりやすい例えでいえば、「心筋細胞はなぜ筋肉痛を起こさないのか」心筋細胞でも筋肉痛を引き起こす乳酸は生じるが、心臓は乳酸をエネルギー源として使用する能力を持っているのだという。
長い年月をかけてのマウスを使った実験などを経て、心臓の交感神経と副交感神経の関係、そして鍵となる神経伝達物質の作用が明らかになっていく。その結果として虚血系心疾患への耐性があがるデータが確認されたというのだから驚く。すなわち心筋梗塞は直ちに絶命するが、そうではなく相当な期間の延命につながる道があるのだという。
自分をはじめ中高年は生活習慣病をかかえ、心臓をはじめとする循環器系器官に爆弾を抱えている人も多い。本書を読むと医学が切り開いていく未来に光明を感ぜずにはいられない。医学の将来に大いに期待するばかりである。
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