2022年5月30日月曜日

読了メモ「野生の思考」クロード・レヴィ=ストロース



読了。

正直、難しかった。
レヴィ=ストロースを一度は読んでみたいと思っていたが、
たいした予備知識もなく、対抗馬のサルトルのことも
よく理解していないうちに、勢いだけで読むのは厳しかった。

レヴィ=ストロースと言えば、構造主義とよく言われ、
どんなものかと構えていたら、本書は、文化人類学や民俗学の本であった。
オーストラリア北部やソロモン諸島、ニューヘブリデス諸島にある
小さな島々の一つ一つの部族単位ごとの習慣や信仰、習癖などが
こと細かに検証されている。
タブーとされている食べ物や、婚姻にまつわる規定、
これらの掟を犯した場合の罪などは代表的な事例である。
罪を犯した者は、集団の中で食べられてしまうという部族もあるそうだ。
また、動物や植物を思考の象徴に置いた習慣の披瀝が面白い。
あらゆる動物が慣例の象徴であり、タブーの監視役であり、
一方、植物はいつも人間の味方であったりする。

日本はよく多神教といって、山や川、草木、住宅や家具、
あらゆるものに神様が宿っているという話を聞く。
本書に出てくる各部族もはたしてそうであった。
その多神教の考え方が、出生と死、部内の階級に影響しており、
その典型的な型として、インドでは職業カーストとして
民族を分離してしまうという抗えない事例にいきつく。

興味深い教えとして、未開民族は農耕や畜農に無頓着だ
という通念のもとになっているのは、
旅行者が訪れる幹線道路や都市のそばに住んでいて
伝統文化の破壊が最もひどい土地の人間のことを言うそうである。

たとえば、ある部族に自分の氏族神として誰に祈ればよいかと尋ねると
タイプライターや紙やトラックがよいと勧められたという。
それは我々がいつも御厄介になっているものだし、
自分達の先祖から受け継いだものだからではないだろうか。


そして最後の章では、徹底的にサルトルの考え方を批判して終わっている。
この章の意味するところは、サルトルの考えを
少しでも理解しないとわからない部分だ。
今度は、是非ともサルトルの実存主義を一読してみたくなった。

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野生の思考
クロード・レヴィ=ストロース
大橋保夫訳
みすず書房 2016年

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