2019年11月17日日曜日

読了メモ 植木等伝「わかっちゃいるけど、やめられない!」 戸井十月

本記事は、2015年にキュレーションサイト「iftaf」に掲載されたものに
加筆・修正を加えて再掲載したものです。




読了。

植木等の話し言葉が満載。
その行間や字句の間から、
あの明るい高笑いの声が聞こえてくる。
まさに表紙の顔そのもの。

かといって、C調で無責任な話ばかりではない。
むしろ、慎ましく質素という言葉が当てはまる。


前半は、厳しい父親の存在と、芸能界入りまでの葛藤の話。
ハナ肇や谷啓、クレージーキャッツのメンバーとの巡り合い。
青島幸男との出会い。
スーダラ節の誕生。
「お呼びでない?」のギャグの誕生にまつわる思い。


そして後半では、過労のため病に倒れ、
クレージーキャッツの人気に
陰りが見えてくる時期から老齢期にかけての
感情の変化が印象深い。

東宝の映画シリーズも終わりと言われた時、正直ホッとしたという。
「もうあのテの映画にでなくていいと思った」と。
一方で、不安も...。


「明るく陽気で、調子よく世渡りする青年を演じ続けている内に、
そういう生き方をしなくちゃ植木等じゃないと、
自分自身で無意識の内に思い込んでいた。

だから、自分が「王将」の坂田三吉の役を
やる齢になっていたことに驚いちゃってね。」


若い監督が試行錯誤をし、成長していく姿をみて、
自分もそういう気持ちを忘れたくないし、威張ったりもしたくない。
あの黒澤 明を、甘ったれてる、大した男じゃない。
と叱咤することもあったという。


最後に自分たるところをぶれなく持っているところが嬉しい。


「笑顔と明るさね。
笑顔がなくなって、
明るさがなくなったら、
僕の存在価値なし!」


巻末には、谷啓や付き人兼ドライバーだった小松政夫へのインタビューもついている。
この小松政夫のインタビューがまた泣かせます。


いろいろ書きましたが、これもジャケ買いです(笑)

では、どうぞ。



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植木等伝「わかっちゃいるけどやめられない!」
戸井十月
小学館 2007年

2019年11月2日土曜日

読了メモ「似顔絵物語」 和田 誠




読了。

ずいぶんと、日にちが経ってしまいましたが
和田 誠さんが亡くなられました。
ご冥福をお祈り申し上げます。

和田さんといえば、細い線で書かれた
イラストや似顔絵のイメージなんですけど
最初のころは、筆で書いていたらしいです。

学生の頃は、時間割を先生の似顔絵で作成したり
友人の似顔絵も描いたりして、練習していたそうです。
本書にも、和田さんの描いた似顔絵がふんだんに載っています。

以前、江口寿史さんのイベントに行ったことがあって
即興でお客さんの似顔絵を描くというコーナーがあったんですけど
これがとてもいい訓練になるんだと言っていました。
何事も努力ですね。
本書の文末にも和田さんらしい取り上げ方で
努力することの大切さを諭してくださっています。


本書には、いろんな似顔絵描きの方の話がたくさんでてきます。
もちろん山藤章二さんとの話もあります。
週刊朝日を後ろから開かせる男と言わしめた
あのブラッック=アングルという似顔絵のコーナーです。
和田さんは、とてもとてもあんな風には書けないと言っています。
顔以外の部分も含めて、その当時に起きた事件や世論を
一つにまとめてしまうっていう技術は、なかなかできないし
それでいて、とてつもない量を書いているので
全く追いつけないと言っています。

安西水丸さんが描く村上春樹さんの話もあって
和田さん曰く、あれは、あまり似ていないけど
村上春樹以外の何者でもない、ある種の記号といえるかもしれないなと。
もしかしたらピクトグラムとでも言いたかったのかな。


ちなみに、イラストレーターという肩書を使い始めたのは
和田さんだとか。本当かな。ちょっと意外。
その和田さんのお顔、もしくは自画像をご存知の方はいますか?
案外、似顔絵の上手な方って自分の顔を描かないようですね。
本書には、和田さんの似顔絵が載っていますので
是非みてください。ちょっとイメージかわるかもw

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似顔絵物語
和田 誠
白水社 2006年