本記事は、2015年にキュレーションサイト「iftaf」に掲載されたものに
加筆・修正を加えて再掲載したものです。
読了。
植木等の話し言葉が満載。
その行間や字句の間から、
あの明るい高笑いの声が聞こえてくる。
まさに表紙の顔そのもの。
かといって、C調で無責任な話ばかりではない。
むしろ、慎ましく質素という言葉が当てはまる。
前半は、厳しい父親の存在と、芸能界入りまでの葛藤の話。
ハナ肇や谷啓、クレージーキャッツのメンバーとの巡り合い。
青島幸男との出会い。
スーダラ節の誕生。
「お呼びでない?」のギャグの誕生にまつわる思い。
そして後半では、過労のため病に倒れ、
クレージーキャッツの人気に
陰りが見えてくる時期から老齢期にかけての
感情の変化が印象深い。
東宝の映画シリーズも終わりと言われた時、正直ホッとしたという。
「もうあのテの映画にでなくていいと思った」と。
一方で、不安も...。
「明るく陽気で、調子よく世渡りする青年を演じ続けている内に、
そういう生き方をしなくちゃ植木等じゃないと、
自分自身で無意識の内に思い込んでいた。
だから、自分が「王将」の坂田三吉の役を
やる齢になっていたことに驚いちゃってね。」
若い監督が試行錯誤をし、成長していく姿をみて、
自分もそういう気持ちを忘れたくないし、威張ったりもしたくない。
あの黒澤 明を、甘ったれてる、大した男じゃない。
と叱咤することもあったという。
最後に自分たるところをぶれなく持っているところが嬉しい。
「笑顔と明るさね。
笑顔がなくなって、
明るさがなくなったら、
僕の存在価値なし!」
巻末には、谷啓や付き人兼ドライバーだった小松政夫へのインタビューもついている。
この小松政夫のインタビューがまた泣かせます。
いろいろ書きましたが、これもジャケ買いです(笑)
では、どうぞ。
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植木等伝「わかっちゃいるけどやめられない!」
戸井十月
小学館 2007年