2024年3月18日月曜日

読了メモ「谷崎潤一郎犯罪小説集」谷崎潤一郎

 



読了。


「柳湯の事件」

「途上」

「私」

「白昼鬼語」

の4編からなる。


いずれも短編だが存分に楽しい。

なにせ、あの江戸川乱歩が影響を受け、

アガサクリスティの数年先をゆく作風であったりもするわけで。

実際、本書を読むきっかけとなったのは

江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」に二話目の「途上」が引用されていたから。


いずれの作品も、その世界に引き摺り込まれていくように読んでしまう。

精神が異常とも思える人物たちやその妄想、

探偵に問い詰められ切羽つまる心持ちや

独特の妖艶な佇まいを醸し出す描写にとっぷりと浸り込んでしまう。

そして、凄惨な殺人現場かと思いきや、実は、、、というのも面白い。


ミステリーは、そのトリックや謎解き推理を楽しむ向きが多いと思うが

この谷崎潤一郎の怪しい世界を覗き見するのも一興というものです。

おすすめです。是非!!



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「谷崎潤一郎犯罪小説集」

谷崎潤一郎

集英社 2020年



2024年3月12日火曜日

読了メモ「告白」町田 康


読了。

約680ページの長編。準鈍器本か。

「河内十人斬り」という史実に基づいた小説で、

ガチガチなハードな内容かと思っていたら

会話は全て河内弁、地の文もそれが混じり

ツッコミとボケが展開されて笑いだしてしまうほど。


主人公の城戸熊太郎は、喧嘩上等の博奕打ちで

本当にどうしようもなく、村でも手がつけられない極道者。

ただ、その熊太郎の心の声が丁寧に語られており、

騒ぎを起こしていることとは裏腹に、

相手のことを慮りながらも、

思い通りにできない苦しさ、歯がゆさが

読者の心をゆさぶる。

自分はなぜこんなに暴れてしまうのか。

敗けて銭がなくなるのに、なぜ博奕を続けるのか。

愛するあの人は神仏なのではないか。

心と実際の言動が一致しなくてもどかしい。

そして、最後の一言でやっと熊太郎の思いと行動は一致します。


河内弁の表記が自分には読みづらくはあったものの、

熊太郎の世界に引きづり込まれるように読んでしまった。



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「告白」 町田 康

中央公論新社 2005年