2025年3月25日火曜日

読了メモ「国境の南、太陽の西」 村上春樹 作

 


読了。

    「国境の南、太陽の西」
        村上春樹
        講談社 1992年10月

久しぶりに春樹さんの本。まったくもっての不倫の話。春樹さんの小説については、好き嫌いがわかれるという話をよく聞くが、もしかしたらこのような作品が分水嶺になっているかもしれないと思った。確かに、読んでいて主人公ってやつはずいぶんと自分に都合のよい勝手なやつだなぁと思ったものだ。かと思いきやこんな一言を呟いたりする。

    「まずまずの素晴らしいものを求めて何かにのめり込む人間はいない。
     九の外れがあっても、一の至高体験を求めて人間は何かに向かっていくんだ。
     そして、それが世界を動かしていくんだ。」(p146)

こういう少々キザなセリフが、いかにも鼻をつくのだけれど、言っている中身は至極真っ当だったりする。でもね、どんなに綺麗なことを言っていても、やっぱり不倫はいかんと思います。


2025年3月16日日曜日

読了メモ「零の晩夏」 岩井俊二 作

 


読了。

「零の晩夏」
岩井俊二 作
文藝春秋 2021年6月

 映画監督である岩井俊二氏による書き下ろしミステリー。いわゆる名探偵や敏腕刑事が出てくるわけではない。謎解き役は、子どものころから絵が好きで学生時代も美術部で活動していたが、途中で画家になることをあきらめ職を転々とするうちに、ある美術雑誌の編集部に転がり込んだ八千草花音。
 彼女がある展覧会で目にした一枚の絵。似ているのだ彼女に。絵のタイトルは「零の晩夏」。作者は、”死神”と呼ばれる正体不明の画家。その画家が残した他の絵には、偶然にしてはできすぎるような死を予告していた作品があった。

 美術商や業界誌界隈、謎の画家の家族、そして絵描き仲間も含めた人たちからの話がヒントになったり、掻き回されたり。。。でも、勘のいい人は、もしかしたら途中で真犯人はわかってしまうかもしれません。自分は最後までわかりませんでしたけど。