2017年9月21日木曜日

読了メモ「羊をめぐる冒険」 村上春樹



読了。

今さら羊。でも羊です。
やっぱりこの探し物の話しは面白い。
ここまで活躍してくれた鼠がちょっと残念だけど。

自分の中に羊がいるってことはどういうことなんでしょうか。
混沌の世の中にあって、羊は凡庸の象徴であって、
でもその中でも特殊な羊がいるわけですね。
そこで、自分勝手に急いでいたり不快に思ったりすることがある。
それは苛立ちであり、自らの敗北なんだと。

そんな運転手やら、羊博士やらに諭されながら特別な羊を探していく。
時には、自分から離れて行ってしまう人もいる。
そんな中でも探し物をしていくのが人生なんだという一言がありました。
また、そういう会話が親子でできることの素晴らしさ。

自分はどうかな。
今からでもまだできるかな。

しっかし、いつもビールを2本を頼んでいて
羨ましかったなぁ〜

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羊をめぐる冒険
村上春樹
講談社 1996年

2017年9月14日木曜日

読了メモ「どうにもとまらない歌謡曲 七〇年代のジェンダー」 舌津智之



読了。

著者とはどんぴしゃの同年代でした。
生で同じ曲を聞いいていたはずで
なるほどあの一節はこうとれるのか、この詞はこう読むのかと
うなってしまうばかりw
最近、某所某所で、昭和の歌しか歌ってはいけないというイベントがあるようですが
うんちくMC向けの参考文献としてもいかがでしょうか。

男らしさ、女らしさ、男女の意識、社会・家庭での男と女の掛け合い、
母性愛、恋愛観、結婚観、そしてセックスについて、
70年代のあらゆる歌謡曲を題材にして事細かに分析しています。
最初は、軽めのサブカル本かと思っていたのですがさにあらず。

愛があるから大丈夫なのという歌詞から結婚観の話しから始まり
ピンカラ兄弟と殿様キングスに始まる演歌の世界では
男と女の立ち位置の微妙なズレ感があると思えば
山本リンダからピンクレディーへの繋がりと勢いは
もう圧巻としかいいようがありません。

そして70年代で外せないのが化粧品会社のCMソング。
たくさんの懐かしい曲にのって
都市に繰り出す女性たちの勢いが一気に加速していきます。


著者は今のJ-POPの多くは煽情する音楽であって、
抒情する詩ではないと言っています。
例えれば、某マラソン選手がレース前に聞いて準備運動をするのに
便利なサウンドだと言います。
歌は世につれ、世は歌につれ
本書にも書かれていた通り70年代はおそらく後者だったんですね。

そして松本 隆と太田裕美でまとめてきます。
このパラグラフもしんみりときます。

では、お約束です「どうにもとまらない」山本リンダをどうぞ。



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どうにもとまらない歌謡曲 七〇年代のジェンダー
舌津智之
晶文社 2002年

2017年9月5日火曜日

読了メモ「思い出トランプ」 向田邦子



読了。

直木賞受賞の向田邦子の短編小説集である。
自分としては、同タイトルの小説があって
テレビドラマ化もされてたんじゃないかと思っていたが、
実はそうではなかったようだ。
母からもこの本を読みたいと言われて貸してみたら
あら短編集なのね。と同じように言われた。
親子揃って、何かと勘違いしている。

それぞれの登場人物像の
えぐり出しが絶妙というか、人間の描写がうまい。
人間、光と陰の部分はどうしてもある。
そこをうまくこの人は書いているし、それがまた不自然さなく
腹に落ちるのが怖いくらいだ。
登場人物はほとんどが中年夫婦、その子供、ご近所のご老体、
時には、過去に終わった愛人までも。
舞台もキッチンとはまだ言わない台所や裏の勝手口、
小さな庭、玄関先でのやりとり。


著者のエッセイも、男勝りでバッサリとした書き方が好き。
それが小説になると同じように切り方が鋭いながらも
こうも委細丁寧な人物表現になるのがなんとも言えない。
単なる人物観察以上のものがある。


収録されている小説は13。
トランプのカードと同じ数だけれど
ハートだか、スペードだかはわからない。
トランプ一枚をめくるみたいに
話しを思いおこしながら読んでいくものなのかもしれない。


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思い出トランプ
向田邦子
新潮社 1980年