2017年9月5日火曜日

読了メモ「思い出トランプ」 向田邦子



読了。

直木賞受賞の向田邦子の短編小説集である。
自分としては、同タイトルの小説があって
テレビドラマ化もされてたんじゃないかと思っていたが、
実はそうではなかったようだ。
母からもこの本を読みたいと言われて貸してみたら
あら短編集なのね。と同じように言われた。
親子揃って、何かと勘違いしている。

それぞれの登場人物像の
えぐり出しが絶妙というか、人間の描写がうまい。
人間、光と陰の部分はどうしてもある。
そこをうまくこの人は書いているし、それがまた不自然さなく
腹に落ちるのが怖いくらいだ。
登場人物はほとんどが中年夫婦、その子供、ご近所のご老体、
時には、過去に終わった愛人までも。
舞台もキッチンとはまだ言わない台所や裏の勝手口、
小さな庭、玄関先でのやりとり。


著者のエッセイも、男勝りでバッサリとした書き方が好き。
それが小説になると同じように切り方が鋭いながらも
こうも委細丁寧な人物表現になるのがなんとも言えない。
単なる人物観察以上のものがある。


収録されている小説は13。
トランプのカードと同じ数だけれど
ハートだか、スペードだかはわからない。
トランプ一枚をめくるみたいに
話しを思いおこしながら読んでいくものなのかもしれない。


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思い出トランプ
向田邦子
新潮社 1980年

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