読了。
学生時代に何度か挫折した作品です。
結局、あの頃は最後まで読みきれなかった。
しかし、今、世界中が疫病禍にあって
今こそ読破する機会なのではとチャレンジする気になり
先ほど、読了いたしました。
現在の新型コロナとペストを比べて脅威がどう違うのかはわかりません。
感覚的にはペストの方が怖い気がするけど。
ペストはネズミが宿主でノミが媒介するんですよね。
でも、ヒトからヒトへの飛沫感染もあるらしいです。
鼠蹊部や脇の下、首のリンパ腺が腫れ上がり高熱を発する。
肺に転移するペストもあるそうです。
高校の世界史の授業でも、十四世期頃にヨーロッパを中心に
ペストが黒死病として猛威を奮い多くの死者を出したことを習いました。
本書も、冒頭から大量のネズミの死骸が発見されることから始まり、
いきなり暗い雰囲気に満ちてきます。
主人公のリウーという医師が記した形式になっていますが
治療のためのスペクタクルが展開されるという話ではありません。
どちらかというと、患者と医師、その近しい人たちと
ペストとの不条理で孤独な戦いが描かれています。
当然ながら、ペストが発症した街は完全に封鎖されます。
今でいうロックダウンっていうんでしょうか。
鉄道ももちろん止まります。
往来を走る車も出歩く人の姿も少なくなっていきます。
たまたま街に来ていただけで、発症していない人も
街の外には出られません。
この街は周りが高い壁で囲まれているので
街と外界の出入り口は限られており、
そこの門番と外に出たい人たちとの間で
切実ながらも冷血な応対がなされたりします。
本書の中には、今、我々がおかれている状況にとっても
大切なメッセージが出ていると思うので引用してみます。
あまりにも多くの人々が無為に過していること、
疫病はみんな一人一人の問題であり、
一人一人が自分の義務を果たすべきであること、を言った。
ペストの中に離れ小島はないことを、
しっかり心に言い聞かせておかねばならぬ。
人間は犠牲者たちのために戦わなきゃならんさ。
しかし、それ以外の面でなんにも愛さなくなったら、
戦ってることが一体なんの役に立つんだい。
などなどである。
いかがであろうか。
幸いにもペストは終息に向かう。
私たちも明るい未来を信じて、
一人一人がなすべきことをしなければならないと
読後にあらためて感じたのです。
この時期に読めてよかったと思いました。
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ペスト
A・カミュ 宮崎嶺雄 訳
新潮社 2020年