読了。
著者の暦本さんは、ソニーの研究者。
東京大学にも自分の研究室を持っていて
ユーザーインターフェイスの研究開発をしている。
皆さんはスマホで写真を拡大して観る際に
二本の指で広げるようにして写真を大きくするでしょう。
ピンチングというあの技術を研究開発した人です。
初代iPhoneが発売されるのが2007年。
この技術を暦本さんが発表したのは2001年とのこと。
スマホの登場を予測せずに、こんな技術を開発したのは
なんともすごいが、その源泉は「妄想」にあるのだという。
アイデアの源泉は、いつも「自分」だ。
誰に頼まれたわけでもなく、
むりやり絞り出したわけでもなく、
自分の中から勝手に生まれてくるのだ。
そう、それは「妄想」である。(p5)
また、北大路魯山人の文章を例にあげて
料理と同じく研究開発にも素材が大事であり
具体的な実験や試作の作業に入る前に
論文のあらすじを書いてみて、素材の良し悪しを判断するそうだ。
・課題は何か? それは誰にとって必要なものか?
・その課題はなぜ難しいのか? あるいはなぜ面白いか?
・その課題をどう解決するのか? 〜中略〜
・その手法で解決できることをどう立証するか? どう決着をつけるか?
・その解決手法のもたらす効果、さらなる発展の可能性。(p73)
料理で言えばレシピみたいなものだろうと、
素材が良いと苦労せずに概要も書けるはずだと言っている。
その他にも、
ブレストはワークしない。
多数決ではジャッジできない。
アイデアには孤独なプロセスが不可欠。
一回やってみて失敗するくらいがいい。
そもそも何をしたかったのか。
など、暦本さんの持論が展開される。
特に、失敗は
自分が取り組んでいる課題の構造を明らかにするプロセス(p109)
と言ってその重要性を説いている。
そして
大事なのはこの「発汗」だ。
「このアイデアは面白そうだけど、本当にうまくいくだろうか」などと、
じっと熟考するのではない。
ダメ元ででもいいのでまず手を動かしてみる。(p116)
これは、エジソンの99%の努力と1%の閃きの裏返しとなっている。
このように、難しい技術用語は使わず、料理や普段の暮らしの一面を
例えにあげながら、わかりやすくアイデアの作り方を解説してくれている。
自分にとっては、暦本さんが学生時代に
よく読んだというSF小説の紹介の章などはわくわくしてしまった。
で、はたまた積読が増えてしまったわけだが。。。
ちなみに、暦本さんの研究室には、
漫画「ドラえもん」が全巻揃っているそうだ。
経理からこれは何?と聞かれて、
研究のための参考図書ですと胸をはって答えたとか。
一番最後にはしっかり警鐘を鳴らしている。
よく言われる「選択と集中」だけでは未来に対応できないと。
久しぶりに自己啓発書系を読んだけれども
しっかり啓発されたように思います。
技術系の方でなくともお勧めの本です。
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妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアのつくり方
暦本純一
祥伝社 2021年