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2020年10月21日水曜日

読了メモ「自殺予防学」 河西千秋




読了。

ちょっと気になったので読んでみた。
最近、あまりにもという感じなので。
日本の状態はどうなっているのか。

少々データは古いが、
2007年の交通事故死亡者数が6,000人のところ
1998年の自殺者数は32,863人にのぼる。

しかも、驚きなのは10歳から60歳までを5歳区切りで
死因統計をみると、自殺はどの世代区間でも
死亡原因の上位3位内にランキングされているという。
長寿の国と思っていた日本だが、
人口10万人に占める自殺者の数、自殺率は先進国で最悪なのだ。


自殺は単なる精神疾患ではない。と本書で何度も繰り返し述べられている。
本人を取り巻く人間関係、家族、友人、仕事関係は勿論、
住む土地の風習や因習、そもそも日本という国の国民性など
自殺にまつわる様々な危険因子が潜んでいるという。
では、自殺背景の要因の主なものは何か。
それは、本人の健康問題が圧倒的である。
自殺企図者の多くは、いきなり精神科で診療を受けるのではなくて
内科や呼吸器科など他の診療を受けていることが殆どだという。

全国の病院の救命救急センターに運び込まれる
患者のうち約10%が自殺企図者であるというが
十分な心のケアも施されることなく退院させられてしまう。

もちろん、著者をはじめとする精神科医が中心となって
自殺未遂者に対峙するロールプレイング研修などを行っているが
看護師や医師の多くは、その対処の難易度に悩まされている。
繰り返しになるが、自殺は精神医療だけで解決する問題ではないのだ。

一方で、一部の地区やコミュニティでは、
住民が医師と連携をとりあって、自殺予防の対策を図り
実際に自殺者数が減少したという実績がある。
もちろん、遺族や周囲の人々への支援やケアも考えられていた。

様々な危険因子が潜んでいると書いたが、
逆に予防因子もあるはずであり、
個人一人一人が意識して取り組まないとできないこともある。
例えば、「自殺者ゼロ宣言」と同時に実際の施策の実行に
行政の強いリーダーシップにも期待をしたい。

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自殺予防学
河西千秋
新潮社 2009年



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