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2021年8月11日水曜日

読了メモ「日本のいちばん長い日 決定版」 半藤一利



読了。

1945年8月6日に広島、8月9日に長崎へ原爆が投下された。
そして8月15日に終戦をむかえる。
本書は、8月15日正午の天皇陛下の国民に向けた
ポツダム宣言受諾通告放送までの
二十四時間を追い続けたノンフィクション。
1967年には映画になり、2015年にはリメイクもされている。
自分は映画を二作とも観ていたが、原作は今回初めて読んだ。
ちなみに、陸相役は、一作目は三船敏郎、リメイク版は役所広司が演じていた。

日本近現代史については、著者の半藤一利さんの作品が
とても判りやすく読んでいて面白いと思っている。
鬼気迫る状況に迫真するかと思うと、
柔らかい描写で読者にやさしく説いてくれる。
本書では、特に脚注の部分にそれがある。
半藤さんの「昭和史」(平凡社)などもお勧めしたい。

本書の構成は、前日の8月14日火曜日の正午から
一時間ごとに進んでいく形式。
まさに目の前の出来事のように没入して読み込んでしまった。
日本の敗戦は、もはや逃れようもない現実であること、
ポツダム宣言を受諾し無条件降伏しなければ、
更に国民を災禍に追いやること、
などは理解しながらも、これまで国民や多くの部下に
犠牲を強いてきた軍部、特に陸軍の反発は強く、
陸相の国体護持を思う気持ちは熱いほど伝わってくる。
しかし、もはやそれは過去のものなのだ。

皇居を守護すべき近衛部隊が、
籠城クーデターを蜂起するという青年将校の姿には
かつての二・二六事件を想起させるが
こちらもはじめから崩壊することは目に見えていた。

また、随所で天皇陛下自身が
国民や軍部士官に自らが直接語りかけることを望み、
反乱分子の前にさえも臨もうとする姿勢は
日本という国が大きく変わっていくんだという印象を抱く。


今でも、テレビなどで、8月15日正午の放送から
”堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ”
という天皇陛下の肉声を聞くことがあるが、
本書で、初めてその全文を目にすることもできた。

まさに歴史の転換点に接することができたと感動すら覚えた。
歴史書を読むことは、こういうダイナミズムに
接することができるから、人々を惹きつけるのだと思う。

そして、当たり前なことだが、
戦争は二度と繰り返してはならない。
これにつきることを改めて思う。

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日本のいちばん長い日 決定版
半藤一利
文藝春秋 2021年

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