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2021年10月14日木曜日

読了メモ「フランケンシュタイン」メアリー・シェリー、「批評理論入門『フランケンシュタイン』解剖講義」 廣野由美子




読了。

最初は、新書の方を読む予定だったのだが、
ならばいっそのこと、ネタになっている
原作本を読んでしまえと思ったら
見事にずぶっとはまってしまった。

フランケンシュタインは、ご存知の通り
人造人間を作った博士のことであり、怪物の名前ではない。
映画やアニメなどでは、四角い顔でノソノソと歩いてくる、
ものすごい怪力の持ち主ということになっている。

確かに、原作でも怪物は人間を手にかけ、
その事件に絡めて罪もない人が死に追いやられる。
がしかし、読んでいて怖くはないのだ。
ひたすら哀しいとしかいいようがない。
自分の望まざる意思でこの世に生を受け
死体を繋ぎ合わせた醜い巨体は、
怪物自身が見ても恐怖ではあるのだが、
怪物の心はいつも孤独だ。

感動するシーンは、怪物が小屋に隠れて、
板の壁の隙間から、母屋での人間家族の心温まる生活を垣間見たり
子どもたちが勉強をするところを見て、一緒に文学を学ぶところだ。
その結果、怪物はなんと言葉が話せるようにまでなってしまう。
盲目の老人を一人残して家族が出かけたところへ
怪物は降りてきて老人に話しかけ、老人とすっかり打ち解けるが
帰ってきた子どもたちに見つかり、めった打ちにされて追い出されてしまう。
そしてその家族は怪物の存在を恐れ、
あっという間に引っ越してしまうのだ。

このように怪物は常に寂しい気持ちに苛まれている。
そして、自分を愛してくれる友だちを作ってくれと
フランケンシュタイン博士に依頼する。
しかし、博士は。。。。

博士は常に怪物を罵倒し憎悪の念を剥き出しにする。
一方、怪物はなんとか博士にすがりつき自分の生活を
よきものにしたいと懇願するが、叶うことなく、
命をもてあそぶ博士に恨みの念を重ねることになる。

本作は、ロバート・デ・ニーロが怪物役で1994年に映画化もされている。
多少、端折ってはあるものの、原作に近い形ではないかと思う。
もちろん怪物の姿、形は、皆さんがイメージするものとは違う。

繰り返すがホラーではない。読後に切なさを残す物語。
フランケンシュタインの先入観をひっくり返すことになると思う。
一読をお勧めしたい作品である。

新書の方は、もちろん、後から読みました。
合わせて読むと、物語の構成や人称の考え方などの小説の技法や
様々な切り口からの小説の読み方を楽しむことができます。
原作を読んだ直後に、このような批評論を読んだことがなかったので
とても新鮮な感じを受けましたし、文章読解の参考になりました。

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フランケンシュタイン
メアリー・シェリー 芦沢 恵訳
新潮社 2020年

批評理論入門『フランケンシュタイン』解剖講義
廣野由美子
中央公論新社 2020年



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