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2021年10月6日水曜日

読了メモ「利己的な遺伝子」リチャード・ドーキンス




読了。

ちょっと前に話題になった本だよなと思いつつ
表紙や奥付けを見ると、40周年記念版とありました。
中身をみると、1976年が初版。
40周年どころか、もうすぐ50周年にならんとしている。

今年は、ダーウィンの本を読んだりと
勢いづいていたのか、500頁近い本書にもトライしてみました。


まず、序文から叩き込まれます。

 一つの種を他の種より上にみる客観的根拠などは存在しないのだ。(p30)

これは、人間とチンパンジーは進化の歴史を99.5%共有していることを
例に取り上げて諭しているメッセージ。
食物連鎖で底辺と頂点はあるけれど、
異種生命間では上下関係はない。

そして、すべての生物は、生き残って子孫を増やすために
利己的であり、時として利他的でもあるという。
利己的な例として、ペンギンは海に飛び込む際、
天敵のアザラシを恐れて最初に飛び込むことを嫌がるが
誰かが最初に飛び込まなければならない。
そこで、最初に飛び込む一羽を無理やり群れから押し出すのだ。
利他的な例としては、地上営巣性の鳥がそうだ。
キツネなどの天敵が近づいてきた時、親鳥は「擬傷」行為をする。
片方の翼が折れた仕草をして歩き、天敵を自分に引きつけ、
十分に巣から離れて、雛が安全と確認できたら飛び立つ。
明らかに親鳥は自分の命を危険に晒して、雛や卵を守っている。

本書は、このような例をあげて始まるが
面白いアプローチだなと思ったのは、
私たちは、自己複製子である遺伝子の「生存機械」なのであるという定義。
つまり、遺伝子が主人公であって、我々はその遺伝子に動かされている
という見方で話を進めているのが視点を変えていて話がわかりやすかった。
この見方は当初かなりの物議を醸した考え方だったようだ。
猿は樹上で遺伝子を維持する機械であり、
魚は水中で遺伝子を維持する機械であるということ。

ダーウィンは、自然淘汰論を説き、
外部環境の変化に適応できるものが生存できるという説を展開した。
ドーキンスは、進化的に安定な戦略を生物群がとることを説いている。
例えば、ハーレムやサル山などの群れでの順位制がそれで
同種内の社会組織ばかりでなく、
多くの異種からなる生態系やコミュニティにも当てはまる考え方だという。
つまり、遺伝子は、生物単体としての生存だけでなく、
生物群という機能を使ってでも生存競争にも勝ち抜くようになっているのだ。

果たして、人間が作る社会においてはどうか。
福祉国家。これは動物界に現れた利他的システムの最も偉大なものかもしれない。
しかし、残念ながら不安定だという。
それは利己的な個体に濫用されるからだ。

また、子どもは利己主義の塊であるとも。
したがって、我々は、子どもに利他主義を教えなければならない。
子どもの生物学的本性に、利他主義が最初から組み込まれてることを
期待するわけにはいかないからで、
純粋で、私欲のない本当の利他主義の能力を持てるのは
人間の優れた部分の一つとも言われている。
つまり、人間だけが、利己的で自己複製する遺伝子の
専制支配に反逆できるというのだ。


あとがきに、印象的な一文があったので最後に記しておきます。

 実は、本書「利己的な遺伝子」の中心的な主張を撤回する道はないものか
 と、模索しているのである。〜中略〜 抜本的な改訂が不可避なはずだと
 思われるのではないか。(p449)

生命神秘の探究の道は、まだまだ続きそうです。

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利己的な遺伝子 40周年記念版
リチャード・ドーキンス
日高俊隆/岸 由二/羽田節子/垂水雄二 訳
紀伊国屋書店 2020年

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