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2024年4月8日月曜日

読了メモ「増補版 敗北を抱きしめて 第二次大戦後の日本人 上・下」 ジョン・ダワー



読了。

久しぶりに読み応えのある歴史ものだった。

敗戦後のGHQ占領下における
日本の政治・社会・文化・経済などを浮き彫りにしたノンフィクション。
サンフランシスコ講和条約で、米国の占領は一応の終わりを告げるが
本書は1989年の昭和天皇崩御まで話をひっぱる。

庶民レベルから政治家/官僚、そして天皇にいたるまで
アメリカ人が、ここまで日本人の思考・行動のありさまを
解き明かしたことにまずは驚く。
ルース・ベネディクトの「菊と刀」の読了以来の感嘆だった。
具体的な統計データ提示はもちろん、
各種資料やインタビュー、報道の内容を通して、
当時の日本人の言動や考え方を見事に抜き出している。
また、マッカーサーが天皇制を重要視し、
最終的に戦争責任を問わせなかったかがよくわかる。
アメリカはここまで日本のことを研究調査していたのかと。
一方で、東京裁判に代表される戦争犯罪の裁判では
「戦勝国の裁き」と「敗戦国の裁き」と題して
両サイドからの戦争責任の検証を行なっているのも注目される。

上巻は、敗戦直後の絶望の底から這い上がり、
食べるため生きるための死に物狂いの庶民の生活や、
パンパン/闇市/カストリと言われた集団の動きから
坂口安吾や太宰治に代表される旧式な価値観への文化的挑戦、
アメリカ文化への憧憬と軋轢などが綴られ、
下巻は、天皇制保持を貫いたGHQの真意や
武力の完全放棄を謳う日本国憲法制定への日米双方の動き、
GHQ検閲下での民主主義の醸成、
そして国民の関心が薄れてしまった東京裁判などが記されている。

おりしも、オッペンハイマー博士の映画を鑑賞し

テレビで下山事件の特集番組を観たが

本書の時代背景と共通する大きなうねりがあると感じた。

それは一体なんだろうか。。。


なお、本書の原題は下記の通りで

米国でも数々の賞を受賞したノンフィクションなのでした。


EMBRACING  DEFEAT

Japan in the Wake of World War II

by John W. Dower


以下はAmazonへのリンクです。

増補版 敗北を抱きしめて 第二次大戦後の日本人 上
ジョン・ダワー
三浦陽一/高杉忠明 訳
岩波書店 2004年

増補版 敗北を抱きしめて 第二次大戦後の日本人 下
ジョン・ダワー
三浦陽一/高杉忠明/田代泰子 訳
岩波書店 2004年

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