読了。
アニメではなく、マンガ版「風の谷のナウシカ」をベースにした一冊。
読み応え充分で、久しぶりにマンガ版も読み返したくなった。
昔、マンガ版を読んだ頃は、アニメのイメージが強すぎたせいもあって
なかなか理解に苦しんだことを覚えている。
あらためて気づかされたのは、
マンガの第一巻が1983年に刊行され、
最終の第七巻が出たのは1995年。
その間、宮崎 駿監督のアニメ映画としては、
「風の谷のナウシカ」(1984年)
「天空の城ラピュタ」(1986年)
「となりのトトロ」(1988年)
「魔女の宅急便」(1989年)
「紅の豚」(1992年)
がそれぞれ公開されている。
そして、1997年には「もののけ姫」が公開された。
これらの映像作品が生まれてきた背景に
ナウシカの物語が脈々と生き続けていたことになる。
風の谷は人口が500人程度の協同労働を営む辺境自治国であったことや
ナウシカの父ジルに象徴される首長制の話などを通じて
風の谷の民族的イメージが明らかになり、
蟲や腐海の存在を解きほぐすことで本書の話は中核に進んでいく。
印象的だったのは、ナウシカの生命観というのか
世界全体をひとつに捉える見方で、
「食べるも食べられるも この世界では同じこと
森全体がひとつの生命だから......」
「闇は私の中にもあります.....」
などの言葉からみることができる。
自然/人造、清浄/汚濁などの
二元論を忌み遠ざけているとも評している。
そして、聖書の黙示録を引き合いにして
”あらゆる危機が技術的に解決され、すべてが適切に管理され、
機能している世界は、いったいパラダイスなのか”
とナウシカは問うているのではないかと著者は言っている。
最後の締めで、イデオロギーやドストエフスキーを論じる部分は、
ちょっとやりすぎかなという感じがしたが、
アニメはもちろん、マンガ版を再び観直す気にさせてくれたし
鑑賞後は湧き起こってくる思いが違ってくるだろうと
期待を持たせてくれた一冊でした。
「その者青き衣をまといて金色の野におりたつべし」
この一言を思い出すだけでも観たくなりますね。
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