読了。
林太郎さんの作品を読んだのはずいぶんと久しぶりのことだ。
読み直してみると綺麗な文章で読みやすく
情景の湧き出るような自然な筆運びに気付かされる。
こんな文章だったけと思い直すほど。
やはり中高生の時に読むのと大人になってから読むのとでは
感じ方が全く変わってくる。
お話は、上野、池之端、不忍、本郷、根津の辺り一帯で
いわばご当地小説とでも言おうか。
さまざまな地名が出てきて妙なリアル感がある。
お話は学生の僕が語る、
友人の岡田、それと相慕う仲となるお玉という女性のこと。
たいへん美しい女性だが、高利貸しの妾だった。
お玉が妾になる経緯も如実に触れられており、
それが後に係る岡田と大きく対比されて
お玉の悲哀さに一層の拍車がかかる。
将来を嘱望された医学生とはかけ離れた世間に住んでいるのだ。
そんな二人は往来で図ったように見合わせては
顔を赤らめるようなじれったさを見せる。
お玉の飼っている紅雀の籠を襲った蛇を
岡田が退治する事件も起きて
急接近するところなどはドキドキしてしまう。
二人は再び往来で顔を合わせるが
その時、岡田はドイツ留学が決まっており
とうとう結ばれることはなかった。
大人になって、こういう作品を読むのはいいですね。
夏目さんも芥川さんも、新しくは太宰さんや三島さんもいいけれど、
林太郎さんもいいです。
まだまだ、読んでいない作品がたくさんあるので
楽しみはつきない。
以下はAmazonへのリンクです。
「雁」
森 鴎外
新潮社 2019年
0 件のコメント:
コメントを投稿