2024年5月1日水曜日

読了メモ「雁」 森 鴎外

 


読了。

林太郎さんの作品を読んだのはずいぶんと久しぶりのことだ。

読み直してみると綺麗な文章で読みやすく

情景の湧き出るような自然な筆運びに気付かされる。

こんな文章だったけと思い直すほど。

やはり中高生の時に読むのと大人になってから読むのとでは

感じ方が全く変わってくる。


お話は、上野、池之端、不忍、本郷、根津の辺り一帯で

いわばご当地小説とでも言おうか。

さまざまな地名が出てきて妙なリアル感がある。


お話は学生の僕が語る、

友人の岡田、それと相慕う仲となるお玉という女性のこと。

たいへん美しい女性だが、高利貸しの妾だった。

お玉が妾になる経緯も如実に触れられており、

それが後に係る岡田と大きく対比されて

お玉の悲哀さに一層の拍車がかかる。

将来を嘱望された医学生とはかけ離れた世間に住んでいるのだ。


そんな二人は往来で図ったように見合わせては

顔を赤らめるようなじれったさを見せる。

お玉の飼っている紅雀の籠を襲った蛇を

岡田が退治する事件も起きて

急接近するところなどはドキドキしてしまう。


二人は再び往来で顔を合わせるが

その時、岡田はドイツ留学が決まっており

とうとう結ばれることはなかった。


大人になって、こういう作品を読むのはいいですね。

夏目さんも芥川さんも、新しくは太宰さんや三島さんもいいけれど、

林太郎さんもいいです。

まだまだ、読んでいない作品がたくさんあるので

楽しみはつきない。



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 森 鴎外

 新潮社 2019年



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