2024年5月12日日曜日

読了メモ「11の物語」 パトリシア・ハイスミス 小倉多加志 訳

 


読了。

役所広司さん主演映画「PERFECT DAYS」の小道具三冊のうちの一冊。

公開当初、流通在庫は殆ど見当たらなかったが、

この4月頃から書店店頭で漸く見かけるようになった。


11編のミステリーといっても、

名探偵や敏腕刑事が綿密な推理と地道な捜索で切った張ったをする話ではない。

犯罪の動機を主軸に犯人目線で描かれており、

人間の精神や心理の変化が生々しい。

虚言癖や妄想、思い込み、衝動的な行動、

嫉妬、深い愛憎などが絡み合って

罪を犯す犯人の心の変化がつまびらかにされる。


いくつかは動物が登場する。

食用のカメのほかに、正体不明の動物、

かたつむりの話は2編あった。

いずれもキモい話ではある。


自分は「恋盗人」と「ヒロイン」という話が好きだ。

「恋盗人」は他の作品にはないドンデン返しがあり、

「ヒロイン」は子どもたちとの微笑ましい関わり合いの様子が

エンディングを際立たせていた。


どの話も読み終えた後の薄気味悪さと人間の怖さのようなものを覚えてしまう。

PERFECT DAYSに感化されていると思わぬボディブローを食わされる。



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 パトリシア・ハイスミス
 小倉多加志 訳

 早川書房 2024年



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