2021年3月31日水曜日

読了メモ「死体の解釈学 埋葬に脅える都市空間」原 克



読了。

タイトルはちょっと怖いのだが、
社会科学でもあり、これからの都市のあり方を
考えるにあたって避けては通れないテーマだと思う。

要は、「埋葬」の話です。
人間の死に対する価値観について
と置き換えてもいいかもしれない。

話は、18世紀のベルリンから始まる。
当時の国王からいきなり市民に対して
次のような命令が下された。
 
 教会の敷地内をこれ以上墓地として使用してはならない。
 今後は、遺体を市域外の地区に埋葬しなければならない。

というような趣旨のものだった。

当時、ベルリンは市の外側を城壁が取り囲む形。
お察しの通り、城壁内の使える土地がなくなってきてしまったのだ。
そこで、墓地として使っている土地を召し上げ
新たな都市建設に充てようとした。
もちろん、外壁を取り崩して拡充すればよい
という向きもあるが、
いたちごっこになってしまうのは目に見えている。

当時から、葬儀の際は棺を担ぎ上げた葬列が
市内を巡る習慣があり、
終点地の埋葬地が、市街の外、
さらに距離がある場所となると
今まで通りとはいかなくなる。
棺の担ぎ手もいなくなってしまうのだ。
信者の宗教離れという笑えない話になってくる。

一方、パリでは、公衆衛生の観点から
市街地での埋葬での是非が議論されていた。

この他、仮死状態と真の死の判別についての経緯では
実際に埋葬した家族が生きて帰って来たという
話が掲載されていたりする。

日本は、ほぼ火葬で、小さな骨壷を家族単位で埋葬する
という極めてコンパクトな形が主流。
最近では、海や山に散骨する自然葬が話題になることもある。
が、いずれにしても都市開発において
埋葬という行為は避けて通れない問題であり、
将来は宇宙葬なんてのもありなのかなと思ってしまうのでした。

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死体の解釈学 埋葬に脅える都市空間
原 克
廣済堂出版 2001年

2021年3月21日日曜日

読了メモ「隠された悲鳴」ユニティ・ダウ



読了。

ミステリー・・・・・
といいたいところですが、謎解きは殆どありません。

作者は、ボツワナの現職の外務国際協力大臣。
テーマは、「儀礼殺人」。

本書の定義によると、

 ある儀式にのっとって
 人体の一部を得るために
 行われる殺人。

とあります。

冒頭、儀礼殺人のために生贄とする少女を探し求めている
犯人が登場します。犯人Gpは3名。
いずれも、社会的地位や実権を掌握している人物です。


ある村の少女が行方不明になるのですが、
警察は、野生のライオンに襲われたものとして
事件を終わらせてしまいます。
それから5年後、国際貢献活動に意欲を注ぐ
若い女性が、ボツワナの奥深い田舎の診療所にきて
とんでもない「証拠」を発見します。
タイトルにある「隠された悲鳴」に相当するものです。

そこから、5年前の事件についての
掘り返しが始まります。
警察をはじめ高級官僚ら数名が首を揃えて
大きな会議室の一角で
真相を追求、いや暴露し始めます。

村人の怒りは頂点に達しており、
当時、なぜ警察は嘘の捜査をして事件の幕を下ろしたのか。
犯人はライオンのはずがない。
「証拠」が物語っているではないか。

真相を開示するページでは、
思わず目を背けたくなるシーンです。
人権問題とも言えるこの事件は
呪術、因習、抑圧、貧困、隠蔽、秘密が幾重にも重なって
一人の少女の命とその惨い扱いを覆い隠しているのです。

遠い昔の話ではありません。
実際にあった事件をもとに
一国の現職の大臣が綴った話です。
今でも現存する犯罪と思うとやりきれません。
現実にはしっかりと目を向けていきたいと思います。


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隠された悲鳴
ユニティ・ダウ 三辺律子訳
英治出版 2019年





2021年3月15日月曜日

読了メモ「上を向いて話そう」 桝井論平




読了。

久米宏さんの動画サイトで紹介された本。
とは言っても初版は2016年なので、新刊というわけではない。

自分は残念ながら、論平さんの
パックインミュージックは、殆ど聴いたことがないのだけれど、
本書の中に、小島一慶、松宮一彦、
大澤悠里、生島ヒロシが並んでる写真を見ると、
昔、なんだかんだで、よくラジオを聞いてたなぁ
なんて思ってしまうのでした。

話術について書かれてる。
人とコミュニケーションをするにあたって
当たり前だけど、「話す」ということがいかに大切か。
どんどん話した方がいいよ。君の声が聞きたいよ。
とまで言ってくれて、まるでラジオを聞いているよう。

日本語の難しさについて、敬語はもちろん
鼻濁音や母音の無声化など、
ちょっと専門的な話も出てきますが、
論平さんの調子で
わかりやすく解説してくれています。
アクセントのくだりは、
思わず声を出して読んで、
違いを確認したりもしました。

後半には、既に終了してしまっている番組ですが、
TBSラジオで放送されていた
久米さんの「ラジオなんですけど」に
出演された際の、トークが掲載されたりしていて、
久米さんと論平さんとの軽妙なやりとりを
楽しむことができます。


本書と話は少しずれますが、
久米さんの動画サイトでは、時々、本が紹介されます。
面白そうな本ばかりなので、
チェックしておいて、また読んでみようと思います。

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上を向いて話そう
桝井論平
ほんの木 2016年



2021年3月5日金曜日

読了メモ「坊っちゃん」夏目漱石




読了。

"親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。"

で、はじまるお馴染みの小説です。
何年ぶりに読んだのかなぁ。
おそらく中学生の頃に読んだその時以来だと思うので
かれこれ、四十年ぶりかなw

そこで、皆さんも読んだことがあると思いますので問題です!
下記の登場人物について、坊っちゃんがつけた
渾名を当ててみてください。
さて、何人言い当てることができるかな。。。。

 校長:
 教頭(文士):
 数学主任:
 英語:
 画学:
 遠山のお嬢さん:

あと、坊っちゃんが慕っていたお清という下女がいましたね。

もう中学生の頃に読んだ時の印象は忘れてしまったけれど
今になって再読しても、想定通りに痛快ですね。
べらんめえ調で捲し立ててくるので
すっかり江戸落語を聞いてるような錯覚に陥ります。
テンポもよいし、すいすいとページが進みます。

また、四国は愛媛の「ぞなもし」という方言が
何度も出てきて、短気な坊っちゃんとのやりとりが
可笑しくてたまらないです。
でも、そのうち「ぞなもし」という方言にも
読んでる方も慣れてきたのか、
とても優しい雰囲気につつまれる感じになります。

そんな中で、月給をあげてくれるという話を
坊っちゃんが断るというところで、下宿のお婆ちゃんが
そんなことを言っちゃいかん云々と諭す場面があるのです。
ここがですね〜、昔の自分とちょっと重なる記憶があって、
なんかとても印象深い場面なのですよ。
ふんふん、自分も若かったなぁ〜なんてね。

表紙のモデルは大島優子さんですが、
自分の描く坊っちゃんの作品イメージとは
ちょっと違うかな。


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坊っちゃん
夏目漱石
ぶんか社 2009年