2021年8月27日金曜日

読了メモ「ダイナソー・ブルース 恐竜絶滅の謎と科学者たちの戦い」 尾上哲治




読了。

題名からすると、ハリウッド映画のような
派手な展開をイメージしそうだが
地道なサイエンスノンフィクション。

今から6,600万年前の白亜紀末期に
恐竜の大量絶滅があったわけですが、
その原因は、巨大隕石が地球に激突したことに起因するという
天体衝突説が有名です。

だが、それに異議を唱える科学者もいます。
その理由として、白亜紀と次の新生代の境目の地層には
それまであった恐竜の化石が見つからないというのです。
天体衝突と恐竜絶滅は時間的にずれているのでないか
という説が浮上してくるわけです。

境目の地層には、地球上にはない「宇宙塵」が発見されたり
事実、180kmにもおよぶクレーターの後が
メキシコで発見されており、天体衝突があったのは確かなようです。

ただ、天体衝突だけでなく、それ以外の要因はなかったのか、
という科学者たちの論争が繰り広げられていきます。

有力候補にあがったのが、天体衝突と
相前後して起きたインドのデカン高原での
大規模火山噴火活動とそれに伴う気候変動。
硫酸雨が降ったと言われ、
カルシウムの殻を持つ生物のみならず
恐竜の卵なども死滅していったという説がでてきます。
その他にも、プランクトンから始まる食物連鎖が絶たれていく説、
二酸化炭素で地球が充満する説など
いろいろな説が検証されていきます。

恐竜を絶滅に追い込んだ犯人は誰なのかは、
最終的には依然としてはっきりしません。
しかしながら、自説の正しさを証明するべく
各々の科学者たちが執拗に突き詰めていく研究活動や
学会だけでなくサイエンス誌やネイチャー誌などを巻き込んだ
メディア上での駆け引きなどもあって、
面白く、エキサイティングな一冊でした。


地質学や古生物学は気の遠くなるような
ゆっくりとした時間軸上の話なので、
なかなかピンとこないかもしれません。
でも、我々、人類が繁栄しているこの時代も、
長い年月をかけて、いつかは終焉の時が来て、
次の新しい世界が始まるのだと思います。
ゆ〜っくりとその時に向けて
もう地球は動き出しているかもしれませんね。

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ダイナソー・ブルース 恐竜絶滅の謎と科学者たちの戦い
尾上哲治
閑人堂 2020年

2021年8月22日日曜日

読了メモ「罪と罰」ドストエフスキー



読了。

いやはや、読みきれるとは思ってなかった。
というか、そもそも一生のうちに読むんだろうか?
とまで思っていた作品。

ロシア文学は、ツルゲーネフの「初恋」や
トルストイの「イワンのバカ」くらいしか
読んだことがなくて、
いわんやドストエフスキーなんて。
と、今までかなり敬遠していたのですが、
新訳版も出ているし、いっちょトライしてみるかと思い立てば、
あれよあれよと、上・中・下と読み終えていました。

読破に大いに役立ったのは本書についてくる栞で、
栞の両面に主な登場人物と簡単な素性が書かれているのです。
ロシア人の名前は覚えづらいのが最大のネック。

タイトルが「罪と罰」なので当たり前なんですが
これは犯罪小説です。殺人事件がおきます。
でも、探偵とかは出てこなくて謎解きなどは特になく、
主人公や取り巻く人々の思惑、
周囲の視線のしたたかな矛先、
貧富の格差からの蔑み、諦め、偏見、
などが、えげつないくらいに描かれていて、
人ってこんな風になっちゃうんだぁとか
いったい何を狙ってそこまでするんだろうか
という人間の欲の深さを感じながら読んでいました。
それに、警察や検察、国家という権力の
市民への圧力なんかもボディブローで響いてきます。
そんな辛い世間を渡る中でも、
愛する人への想いの尊さに心救われるところもありました。

登場人物の名前が難しいのは、
先にも書いた栞の活用で解決できるし、
新訳版はやっぱり読みやすいと思います。

次は、「カラマーゾフの兄弟」かな。
こちらも、学生時代に何度挫折したことかw

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罪と罰
ドストエフスキー
亀山郁夫訳
光文社 2021年 



2021年8月11日水曜日

読了メモ「日本のいちばん長い日 決定版」 半藤一利



読了。

1945年8月6日に広島、8月9日に長崎へ原爆が投下された。
そして8月15日に終戦をむかえる。
本書は、8月15日正午の天皇陛下の国民に向けた
ポツダム宣言受諾通告放送までの
二十四時間を追い続けたノンフィクション。
1967年には映画になり、2015年にはリメイクもされている。
自分は映画を二作とも観ていたが、原作は今回初めて読んだ。
ちなみに、陸相役は、一作目は三船敏郎、リメイク版は役所広司が演じていた。

日本近現代史については、著者の半藤一利さんの作品が
とても判りやすく読んでいて面白いと思っている。
鬼気迫る状況に迫真するかと思うと、
柔らかい描写で読者にやさしく説いてくれる。
本書では、特に脚注の部分にそれがある。
半藤さんの「昭和史」(平凡社)などもお勧めしたい。

本書の構成は、前日の8月14日火曜日の正午から
一時間ごとに進んでいく形式。
まさに目の前の出来事のように没入して読み込んでしまった。
日本の敗戦は、もはや逃れようもない現実であること、
ポツダム宣言を受諾し無条件降伏しなければ、
更に国民を災禍に追いやること、
などは理解しながらも、これまで国民や多くの部下に
犠牲を強いてきた軍部、特に陸軍の反発は強く、
陸相の国体護持を思う気持ちは熱いほど伝わってくる。
しかし、もはやそれは過去のものなのだ。

皇居を守護すべき近衛部隊が、
籠城クーデターを蜂起するという青年将校の姿には
かつての二・二六事件を想起させるが
こちらもはじめから崩壊することは目に見えていた。

また、随所で天皇陛下自身が
国民や軍部士官に自らが直接語りかけることを望み、
反乱分子の前にさえも臨もうとする姿勢は
日本という国が大きく変わっていくんだという印象を抱く。


今でも、テレビなどで、8月15日正午の放送から
”堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ”
という天皇陛下の肉声を聞くことがあるが、
本書で、初めてその全文を目にすることもできた。

まさに歴史の転換点に接することができたと感動すら覚えた。
歴史書を読むことは、こういうダイナミズムに
接することができるから、人々を惹きつけるのだと思う。

そして、当たり前なことだが、
戦争は二度と繰り返してはならない。
これにつきることを改めて思う。

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日本のいちばん長い日 決定版
半藤一利
文藝春秋 2021年

2021年8月4日水曜日

読了メモ「ジェダイの哲学 フォースの導きで運命を全うせよ」ジャン=クー・ヤーガ

 

読了。

みなさんは、スターウォーズを全作観ましたか。

自分は、Epsode 4、5、6、1、2、3 と観て
そのあとも、観たには観ましたが
あまり印象に残っていません。
やっぱり、4、5、6が一番面白かったかな。

本書は、ちょうど4、5、6を観ていれば
ジェダイの騎士やフォースにまつわる
なるほどと頷く話や、蘊蓄、絵解きをしてくれます。
微妙に1、2、3を批判していたのも面白い。

まぁ、映画の宣伝ブックといえばそれまでですが
なかなかいいことも言ってますよ。
いくつかピックアップしてみます。

まず、一人前のジェダイになることについては、

    この現実は、きみが作り出したものなのだから。
    どんな意識がこの現実を作りだしたのか考えてみるがいい。(p76)

 大切なのは、くもりや偏見のない、真の自分を見つけられるか。 
    他者に刷り込まれた価値観を捨てる覚悟があるかどうかなんだ。(p89)

なかなか、響きますね。自分に自信を持てということか。
自分自身を見つめ直せということなのでしょう。

そして、

    「やる」か「やらぬ」かだ。「やってみるはない」(p96)

これは、Epsode5で、ヨーダが
フォースの修行をしているルークに説く名言ですね。
かなり強いメッセージとして受け止められます。
ナイキ風に言い換えれば、”Just do it !” でしょうか。
これも好きな言葉です。

また、ジェダイが戒めるダークサイドについては、

    きみが与えた喜びが、きみ自身に喜びをもたらすように、
    きみが抱いた恐れは現実の恐れとなってきみの前に現れるだろう。(p109)

    恐れることは恥ずかしいことじゃない。人は誰でも恐れる。
    その感情を否定せず、認めてあげるんだ。そうすれば恐れは解放される。(p135)

この部分は、「恐れ」を「不安」に置き換えてみると
もっと身近に感じることができると思います。
恐れをコントロールできれば、ダークサイドに陥ることはないと。
そのためには、恐れをそこにあるものと認める。
以前に「不安のメカニズム」という本を読みましたが、
その本にも同じような記述がありました。

最後に

    人間が本当に探しているのは、今、この瞬間を生きている実感なのだから(p267)

今を大切にというこですね。

以上、諸々ピックアップしてみましたが、
いかがでしたでしょうか。

もちろん、本書を読んだとしても、フォースを使って
Xウィング戦闘機を沼から引き上げるなんてことはできません。
でも、ちょっとだけなら、フォースの力を感じることは
できるんじゃないかな。

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ジェダイの哲学 フォースの導きで運命を全うせよ
ジャン=クー・ヤーガ
学研プラス 2018年