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2022年7月15日金曜日

読了メモ「山月記・李陵 他九篇」中島 敦




読了。

ちょっと、今までに読んだことのない傾向の本を読んでみた。
中国の古典や、漢文調のリズムの良さを活かしながら
読みやすい文体で書かれた作品11篇からなる。

どれも人間の浅はかな考えや思慮の無さ、
自己中心な生き方に流れがちなところを
ビシッと打ち止めて、改心を促す作品ばかりである。

本書のような作品は、正直、読めない漢字が多い。
ルビがふってあっても、遡って読み方を確認することもざらだ。
筆順辞典を持っているので、読めなくとも調べることはすぐにできるが
そのまま飛ばして読んでしまうことも多い。
一つ一つ確認し、意味を理解して読むのがよいと思う一方で
文体の流れやリズム感も楽しみたいとも思ってしまう。

タイトルになっている「山月記」は、
詩人の主人公がなんと虎になってしまう話である。
自分の欲するがままに生活をし、
口先ばかりの生活をしていたら、
いつのまにか、毛が生え、四つ足で走りはじめ、
兎を食い殺していたという。
山中で、主人公は友人に会い、虎の姿のまま人間の心を取り戻し
これまで、己が評価されることしか考えず
残した妻子のことを二の次にしていたことなどを悔やみ、
丘の上で咆哮するという話。

西遊記に絡んだ話が二篇あって、
どちらも、沙悟浄の話である。
この沙悟浄が、もうクズで小心者。
何をするにも躊躇し、失敗への危惧から努力を放棄していた生き方を
玄奘三蔵や孫悟空、猪八戒と遭遇して
特に、悟空の思い切りの良さ、自分が決めた道を
まっしぐらに進む生き方に心を動かされる。
時には、悟空と罵り合いもするようになり
身を持って悟空から学びを得ようとする。

西遊記といえば、堺正章が主演のあのテレビドラマを思い出すけれど
ちょうど、岸部シロー演じる沙悟浄の雰囲気がマッチしていて
読んでいてとても面白かった。
ということで、懐かしいオープニングです。


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山月記・李陵 他九篇
中島 敦
岩波書店 2021年



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