読了。
ガッツリ硬派な河童の歴史のお話。
序章は「古事記」や「日本書紀」から始まる。
もちろん、そんな昔から河童の話があるわけではなく
まずは河童のルーツを探る旅からスタートだ。
因幡の白兎がその背中を伝って海を渡ったという「わに」
あるいは「サメ」や「くじら」にはじまり、
それらが淡水域に入ってきて「へび」になり
「かわうそ」や「すっぽん」と移り変わっていく。
人間の生活圏に近づくにつれて小粒になっていくのが面白い。
河童は実在しないと表紙にもあるが、
日本各地に河童の伝承がたくさんあることがわかる。
本書で取り上げているのは九州での文献や伝承、
年代は18世紀末〜19世紀前半が多い。
河童の識者の中には、あの平賀源内の名前もあった。
また、当時の資料に残る河童の姿はまちまちでも、
頭頂部が凹んで皿のあるもの、
サイズ感としては子どもなみというあたりが共通しているらしい。
手足の指の数もばらばらだったり、
全身が毛に覆われていたり甲羅があったりなかったりする。
どちらかというと「サル」に近いかもしれない。
一方で、寿司屋で胡瓜の海苔巻きをカッパと呼ぶように
河童は胡瓜が好きであり、
また、河童は人と相撲をとりたがる、
などの習性は共通しているようだ。
河童の特殊な能力として、
水中に引き摺り込もうとした人間に手を切断されることがあっても
その際、河童は手を再び接ぐことができたらしい。
「河童の手」のミイラがどこそこのお寺にあるという話も
こんな話と関連があると思われる。
河童伝承の要素の一つに
水天宮を起点とする平家落武者伝説や
キリシタン、すなわちカトリックの修道僧までも
検証のスコープに置いているのも面白い。
月代が乱れた武士や宣教師の中剃りのヘアスタイルは
河童のイメージと重なる。
最後に著者は本書は文献に基づく検証であって、
全国に口承で伝わる河童の話までには触れておらず
まだまだ充分でないことをあげている。
河童の話はもっと奥が深そうである。
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