「どくいり きけん 食べたらしぬで かい人21面相」
1984年3月、当時の江崎グリコ社長の江崎勝久氏誘拐に始まった
菓子メーカーや食品メーカーなどを脅迫した一連の事件。
全真相とあるが、迷宮入りなので犯人は特定されていない。
12年におよぶ取材に基づき、警察、脅迫された企業、流通/菓子/食品業界、
マスコミ、被害者家族の言動や心境、思惑をつぶさに綴っている。
通称「グリコ森永事件」だが、多くの企業が脅迫被害にあっており、
丸大食品、ハウス食品、不二家、明治製菓、
雪印乳業、西友、ダイエーなどの大手企業の他、
中堅食品メーカーにも犯人の脅迫はおよんでいた。
「どくいり きけん」のシールが貼られた青酸ソーダ入りの菓子が
スーパーの棚から発見されたが、死者は幸いにも出なかった。
かい人21面相からの脅迫状は全147通あり、本書の中でも多くが引用されている。
大手企業や警察など巨大資本や国家権力を相手に揶揄嘲笑し、
世間を馬鹿にした文面を読み返すと今さらながら底冷えのする恐怖を覚える。
脅迫された企業が、犯人との裏取引に応じるかを逡巡する様子もあり、
当時の緊迫した情況もうかがわれる。
一方で、警察内部での明らかなミスや本庁と府県警本部間だけでなく、
府県警察間での意思疎通の不備、現行犯逮捕捜査方針への過度の固執、
捜査情報のリークなども指摘されており、
硬直化した警察組織の問題の大きさも語られている。
そして、捜査のプレッシャーに耐えられず警察責任者の自殺があった。
2000年で全事件の時効が完全成立し、
犯人は法に裁かれることはなくなってしまったが、
犯人が使ったと思われる帽子が実は押収されており、
そこから犯人の毛髪がみつかりDNA鑑定までされているとのこと。
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