2024年7月29日月曜日

読了メモ「バナナ剥きには最適の日々」 円城 塔

 

読了。

相変わらず朝の霧の中を歩いているようなわからない話ばかりだった。

それでもついつい手を伸ばしてしまう。結局、面白いのだ。


自分もわけがわからなくなってしまうが、

立場が違えば見方が違ってくるよねとよく言うけれど、結局同じことなんじゃないか。

物事を立体的にみると不思議と道理が通ったりもするし。


例えば、「ないはないはないってこと」ということは、

ないということがあるとも言えるのではないかとか考えてしまう。

また、バナナは3枚皮で剥くか4枚皮で剥くかは、

バナナにはわからないという話を

宇宙人であるバナナ星人の視点で考えてみたりする。


話のタイトルからして読者に挑戦してくる作品もあった。

小説のタイトルと作者名が表記されているのだが、

どっちがタイトルで、どっちが作者名かは、どこにも明記されていない。

もしかしたら本文も含めて、どれがどれを書き表しているのだろうかという話。

つまり、文を読まれる作り手側の者は文章を作成しているわけだが、

読む者も相互に文章を作成しているという見方。

しかも読む者は無意識のうちにこれを行っている。

これをここでは自動生成と呼んでいた。


他にも、分裂して増殖するゾウリムシは輪廻の思想を持つのだろうかとか、

傷だらけの自分の背中が目の前に見えたりとか、

あなたの見ている彼女の見ているあなたの見ている彼女の見ているあなたでは、

もう人間の情報処理系が追随できないこととか。

異星人が地球にいまだにメッセージを送ってこないのは、

実は人間そのものがメッセージなのだという発想の転換。


こんなわからないけどおもしろい話が満載です。



以下はAmazonへのリンクです。

 円城 塔
 早川書房 2014年


0 件のコメント:

コメントを投稿