読了。
神が人間に下したとされる天啓・神託に基づく宗教としては、
世界最古と言われるゾロアスター教。
イランが石器時代から青銅器時代に移行した時代に、
イラン人のゾロアスターが説いたと言われる。
創造主である至高神、それと対立する悪、世界創造の目的と終末論、
救世主信仰、天国と地獄、死後の運命を決める裁判、
死者のよみがえりと最後の審判、邪悪の消滅、
そして正しい者は神の前で永遠に魂も肉体も不死となり幸せとなる。
これらの考え方は、のちのキリスト教、イスラム教、仏教に大きな影響を与えた。
イランからインドにおよぶ近東と呼ばれる地域では、
もともと聖像の形で神や女神を崇拝する慣習があり、
時の権力者や帝国はその統治のために偶像崇拝の寺院を建立した。
しかし、ゾロアスター教徒は、寺院を建立しても
祭壇に彫像を置く代わりに聖所に火をおいたという。
火は闇や寒さをしのぐだけでなく、悪や無知にも戦うとみなされ、
勇気と希望、勝利にささげられた。
これらを背景にゾロアスター教を「拝火教」とも呼ぶようだ。
イスラムの偶像崇拝の否定は有名だが、
そのもとを辿るとゾロアスター教にあるようだ。
また、ゾロアスター教の下での葬送儀礼は風葬とされている。
ゾロアスター教では、神々は世界を
天空、水、大地、木、動物、人間、火の七つに分けて創造したと言われる。
火でさえも穢れたものを焼くことは許されず、
大地も穢されてはならず土中への埋葬は禁忌だった。
これらから、ゾロアスター教では風葬の儀礼があったという。
死体は荒野に放置され、魂は陽光の道を通って天空に昇り、
腐肉は禿鷹や獣によって食われ、残った骨だけが埋められたという。
自分がゾロアスター教の名称を目にしたのは、
高校の世界史の授業で、それ以上のことは何も知らなかった。
本書を通じてイラン・インド地域の長い歴史に
ゾロアスター教が深く関わっていること、
また世界におよぼした影響の大きさに驚く。
ただ、イラン・インド地域の歴史は非常に複雑で、
他民族も流入したほか、権力者の名前も似通っていたりで、
読み進めるのは困難ではあった。
現在、ゾロアスター教徒の多くはインドにあり、
世界各地に散らばっているが、生活の中での祭儀儀式の役割、
信仰や教育のあり方、族外婚配偶者や子孫の信徒としての受け入れなどの問題があり、
なかでも喫緊の問題は祭司の数の減少をくいとめることだと言われている。
0 件のコメント:
コメントを投稿