2024年8月23日金曜日

読了メモ「星の子」 今村夏子

 

読了。


好きな現代作家さんの一人、今村夏子さんの作品。

お話全体に常にただよう不穏な空気感がなんともいえない。


中学3年生のちひろは、小さい頃は体が弱かった。

両親は、ある人から教えてもらった「金星のめぐみ」という水を飲ませたり、

その水をタオルに浸して体を拭くなどし、不思議とちひろは体調を回復していく。

両親たち自身の健康にも役に立っていると信じて疑わない。

味も他の水と違うというのだ。どうやら甘いらしい。

しかし、これらを不審に思った親戚のおじさんが、

この水を全て水道水に入れ替えてしまう事件がおきたりする。


ちひろは、学校でも辛くて明るい希望の見えない日々を過ごす。

憧れの先生の似顔絵を描くのだが、

友達には計算用のメモ紙にされてしまうし、

当の先生からも叱責されて救いようのない淵に立たされる。

隣に座ることになった転校生にも翻弄されてしまう。


そして、家族は金星のめぐみにまつわる信者が集う「星々の郷」という宿泊地で、

歌を歌ったり、集まった人たちとの交流会に参加する。

一見、楽しそうにも見えるのだが、

いろいろな考え方の人がいて、

ここでも読んでいる側としては心が落ち着かない。


最後は、ちひろと両親で流れ星を見るシーンで終わる。

果たして、この家族は本当に幸せなのだろうか。。。。


最初に読んだ今村さんの作品は「あひる」だった。

このときも読んでいて言いようのない澱のようなものを、

心底に抱えながら読み終えた覚えがある。

今回も存分に今村ワールドを楽しめた。また違う作品を読んでみたい。


なお、本書の巻末には、今村さんと小川洋子さんの対談もある。



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星の子
 今村夏子
 朝日新聞出版 2019年

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