読了。
好きな現代作家さんの一人、今村夏子さんの作品。
お話全体に常にただよう不穏な空気感がなんともいえない。
中学3年生のちひろは、小さい頃は体が弱かった。
両親は、ある人から教えてもらった「金星のめぐみ」という水を飲ませたり、
その水をタオルに浸して体を拭くなどし、不思議とちひろは体調を回復していく。
両親たち自身の健康にも役に立っていると信じて疑わない。
味も他の水と違うというのだ。どうやら甘いらしい。
しかし、これらを不審に思った親戚のおじさんが、
この水を全て水道水に入れ替えてしまう事件がおきたりする。
ちひろは、学校でも辛くて明るい希望の見えない日々を過ごす。
憧れの先生の似顔絵を描くのだが、
友達には計算用のメモ紙にされてしまうし、
当の先生からも叱責されて救いようのない淵に立たされる。
隣に座ることになった転校生にも翻弄されてしまう。
そして、家族は金星のめぐみにまつわる信者が集う「星々の郷」という宿泊地で、
歌を歌ったり、集まった人たちとの交流会に参加する。
一見、楽しそうにも見えるのだが、
いろいろな考え方の人がいて、
ここでも読んでいる側としては心が落ち着かない。
最後は、ちひろと両親で流れ星を見るシーンで終わる。
果たして、この家族は本当に幸せなのだろうか。。。。
最初に読んだ今村さんの作品は「あひる」だった。
このときも読んでいて言いようのない澱のようなものを、
心底に抱えながら読み終えた覚えがある。
今回も存分に今村ワールドを楽しめた。また違う作品を読んでみたい。
なお、本書の巻末には、今村さんと小川洋子さんの対談もある。
0 件のコメント:
コメントを投稿