2025年1月3日金曜日

読了メモ「春昼・春昼後刻」 泉 鏡花 作



読了。

「春昼・春昼後刻」
 泉 鏡花 作
 岩波書店 1987年4月

「しゅんちゅう・しゅんちゅうごこく」とそのまま読む。泉 鏡花さんといえば、あやしくて不思議なお話を連想するが、本作のタイトルはいかにものどか。実際、冒頭はこんな会話で始まる。

 「お爺さん、お爺さん。」
 「はあ、私けえ。」(p7)

散歩でぶらぶらしていて、鎌倉に行こうか、逗子に行こうかと思いあぐねていたところだったりもする。と呑気にお爺さんと話をしていると、やはりというか早くもおかしな気配になってくる。女衆が住むという家の前で、青大将を見つけてしまうのだった。話の流れは自然とその女衆の住む家のことになる。機織りをしている女の足元にも違う蛇、赤楝蛇がいたりする。散歩の末にたどり着いたお寺で聞くに、この家は資産家のものらしいが、どうもこの女衆はかこわれているのか幸が薄そう。そこに女を恋慕う男が現れたというのだが、その男は実は。。。
お話は次に続き、とうとう散歩をしていた御仁は女と相対することになる。実際に話を聞いてもやはり救いは見えてこない。飛び入りの獅子舞の小さな闖入者がきて話が急展開するやに見えたが、男に続いて女もとうとう。。。

二作合わせて、わずか140ページに満たない文章量ではあるけれど、文中に漂うのんびりとした雰囲気の中に見え隠れする闇と宙に浮いているようなどこか不安定な話の流れで、不可思議な世界にひきずり込まれるお話でした。最後は海岸に打ち寄せる波の音がずっと響き残っておりました。
 

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