読了。
「ナニュークたちの星座」
雪舟えま 文 カシワイ 絵
アリス館 2018年11月
石を採掘する使命をおびたクローン少年たちのお話。彼らは全て5桁の製造番号が振られているが、お互いには下2桁で呼び合っているようだ。仕事場の鉱山ではマスクやグローブ、ヘルメットやゴーグルを身につける。別段、有毒ガスなどは出ていない模様。それでも健康管理のためペアを作って行動している。
彼らが採掘している石は「隠児石(かくれごいし)」という。青白い光を放つ綺麗な石だが、大人には見えない。もともと特定の子どもにしか見えなかったが、子どもを鉱山に行かせるのを親が渋ったため、その能力を持つ子どものクローンを作った。その子の名前がナニュークという。ただ、ナニュークたちも成長するため、大きくなると隠児石が見えなくなってくる。大きくなったナニュークたちは、炊事や洗濯、養育係、採掘場の廃棄作業などにまわる。
ナニュークの22号は、採掘業から卒業して街に出る。街で「たまごクリーム」を作る修行を積みながら、ホログラム映像を通して人気歌手に出会う。どうやらその歌手は一緒に仕事をしていた元ナニュークらしい。
クローンではあるものの、使命をやり遂げたあとの世界で、自分はいったい何をしたいのか、これからどのように生きていきたいのかを模索する22号。隠児石が見えなくなっても自分たちにとって大切なものは何かを感じる力はいつまでも残り続けるようだ。
装丁にあるようなイラストもふんだんに使われ、お話そのものはティーンエイジャー向けに書かれたものだが、大人が読んでも考えさせられる話。全98ページ。すぐ読めます。