2016年7月3日日曜日
読了メモ「総理大臣になりたい」坪内祐三
読了。
次の週末は参議院選挙投票日をひかえている。
そんなおりだからというわけでもないけれど
部屋の積ん読の山から抜き取った一冊。
財界の大物や文化人と親戚関係にあり、
父親がいきなり出版社の社長に抜擢されたり、
いわゆるエリートと呼ばれる人たちと
家族が交流するのを子どもの時から目前にする環境を通じて
著者自身も少しづつ政治家に詳しくなっていきます。
で、詳しくなるとどうなるかというと
ここが面白いところで、嫌いになっていくのだそうです。
ある時期以降の日本の政治家はロクなもんじゃないと感じていたとか。
そのある時期というのは1980年の頃を指しているようです。
ポストモダンという言葉が使われていて
問題を先延ばしする時風のあった頃だそうです。
その頃から少しづつ日本はバブルの時代に向かっていくのです。
戦後の歴代総理大臣を振り返るところでは
中曽根康弘の国鉄民営化と小泉純一郎の郵政民営化の比較が面白い
というか、言われてみれば、同じ民営化でも全然違うことが明白です。
消費税導入、靖国参拝、中選挙区から小選挙区への切り替え。
それぞれの事象の裏にある政治家の思惑や算盤勘定もありますが
著者のいうところの、政治家はロングスパンで政局を見ているのか、
根本的抜本的なことができないまま次の出来事が起きてしまっている、
という指摘は尤もなことだと思いますし、
政治家でなくとも、市民の日々の生活や仕事の中でも
そういう視点をもっておくのは大切なことではないかと思います。
景気を回復させるためには消費を伸ばす必要がある
という考え方を著者は否定しています。
何かを買いたいというのではなく、
安心して暮らしたいという人が多いのではないか。
老後を心配することもなく楽しく暮らせる小さな日本は実現可能で
少ないお金でも幸せに暮らすことを可能にするのは「知性」であると。
そのための教職員の処遇改善や、授業科目の抜本的な見直しをあげていました。
ゆとりや詰め込みとか、進出か侵略かとかは問うていません。
で、肝心の著者自身が総理大臣に今からなるにはどうすればいいか。
それには「首相公選」しかないのですが、
今の日本では、そのやり方は危険だと言っています。
日本国民は、一つの流れができると全員がそれに乗ってしまい
怖ろしいほどの潮流を生むことがあるという指摘もありました。
確かに、このポイントは少し背筋が寒くなる思いがします。
本書は政治に関する専門書でもありません。
なかばユーモアを交えたエッセイのようなものです。
でも、こういう本を読みながらででも
政治や日本という国について考えたり、
思いをはせたりする時間を持つのは大切なことだと思います。
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総理大臣になりたい
坪内祐三
講談社 2013年
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