読了。
小説ではなく、物語。
お伽噺といった方がいいくらい。
読んでいて、挿絵のような情景が瞼に浮かび
あたかも絵本を読んでいるかのような感じになる。
この著者の作品をこれまでいくつか読んでいるけれど、
アニメーション映画にいつかなるんじゃないかといつも思っている。
主人公は、いろいろなことに夢中となって、
あたかも、そのことにとりつかれたかのごとくとなり、
右に出る者がないくらいに熱中して極めてしまうというジュゼッペ。
オペラ、三段跳び、ナッツ投げ、封筒集め.......。
おかげで周りからは人気者だけれども、
過ぎたるは及ばざるがごとしみたいなところもあるし、
それに、飽きっぽいところも玉にきず。
そんなジュゼッペに転機が訪れるのが少女ペチカとの出会い。
ジュゼッペの心はペチカにトリツカレてしまうのでした。
彼女と出会ってからの話は、それまでとはガラリと変わって、
ぐっと大人向けのお話の流れになります。
相談相手のハツカネズミと一緒に
一途でピュアな気持ちのジュゼッペが
ペチカのことを一心に思い考え、行動する様が切ないのです。
最後の章では、その後二人がどうなったのかを伝える
後日談みたいな展開にもなっていて、
とっても微笑ましいエンディングになっています。
最近、あまりそういうお話にめぐりあえていなかったかもしれません。
本のページ数も160ページほどです。
お手軽に素敵な暖かい気持ちにさせてくれるお話です。
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トリツカレ男
いしいしんじ
ビリケン出版 2001年
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