2016年7月9日土曜日
読了メモ「語るに足る、ささやかな人生 アメリカの小さな町で」駒沢敏器
読了。
アメリカのスモールタウンを巡るノンフィクション。
訪れる町の人口はせいぜい数百人、多くても二千人程度。
そこに住んでいる人たちの目の前にあるのは、
乾いて広大な土地とはるか東西に伸びている道。
そしてこれまで生きてきた過去。
貧困もあるし、未来が見えないところもある。
ハイウェイにバイパスされて取り残された町もある。
それでも、彼らはその町を離れない。
著者によれば、スモールタウンでは退屈を受け止めている
というのは的外れだったそうです。
むしろ、都会の人の方がずっと退屈している印象を受けたと。
自分たちの町で背負う役割を、
他人の手を借りずにこなさなければならないスモールタウンでは、
実際のところ退屈している暇はないというのです。
ドライブインシアター、牧場、モーテル、カフェ、
ナマズの養殖場、製粉工場、ロデオ、床屋、、、
訪れたスモールタウンにはさまざまな営みがあり、
そのどの住人も、訪れた著者を笑顔で迎え入れ、
喜んで話をし、時には悲しみを打ち明けてくるときもあった。
住人たちは、分け隔てがなくいたってフェアなのでした。
前半はニューヨークからシアトルまで。
後半はニューオリンズから北上して、途中66号線に沿ってカリフォルニアまで。
ノンフィクションですが、著者の語り口からなのか、
読んでいてどこか小説みたいな広がりというか感覚になります。
自分の日常感覚から離れている世界からなのかもしれないし、
逆に、住人と著者のやり取りが地に足のついたものであり、
小さな社会の中で家族で生きていくことの大切さをにじませているからでしょうか。
大きな成功よりも小さな平和を願い、虚栄よりも確実な幸福を、
そして、町の住民のために役立つ自らの誇りを町の人たちは心から望んでいる。
という著者の言葉が印象的でした。
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語るに足る、ささやかな人生 アメリカの小さな町で
駒沢敏器
NHK出版 2005年
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