読了。
著者は高校時代にインドを一人で旅し、
北極から南極まで人力で踏破するPOLE TO POLEプロジェクトに参加
世界7大陸最高峰登頂も制覇した。
また、熱気球による太平洋横断に挑戦したが、これはハワイに着水している。
こういう冒険家の体験談を聞いたり読んだりすると
植村直己や三浦雄一郎、先日も写真展を観てきた星野道夫などの
赤黒く日焼けしたベテラン年配者のイメージを持つのですが、
この著者は若い。1977年生まれなので来年40歳ということか。
読む前はタイトルの印象から、過酷な環境や生死をさまよう苦難を
いったいどんな工夫やおどろきの発想で乗り越えてきたかを
手に汗握って読めるのかと、これまた勝手に思い込んでいたものの、
読み始めてみると意外と淡々としていました。
海、山、極地、都市、大地、空 の
6つからなる章立ての中には、それぞれの土地、場所での
それこそ極限な状況や、未知の世界に接する話がたくさんあります。
読み進めていくうちにわかってきたのは、
それらはその土地にあるごく当たり前にあることであって、
なにもお化けや悪魔がでてきて退治する話ではないのです。
何かを見たい感じたいと思ったら、迷わずに足をそこへ踏み出すこと。
それを先人の言葉から学び指針にしているというのです。航海者は進む方角を見据えるために常に現在地を把握し、
小さな船を操るには体力、精神力、仲間との連体感、責任感が必要です。
氷雪地では、GPSとスノーモービルを使えば効率はあがるが五感は鈍化し
自然の中で生きて行く力が衰えていってしまう。
辺境と呼ばれる地に身を置いて自分の位置をあらためて確認すると
今まで見えなかったものが見えてくるのです。
旅の原点は歩き続けることで、何も持たず黙々と歩き続けること。
全ての装備を知恵に置き換えて、より少ない荷物で移動する。と、最後になって、著者の言いたかったことがわかってきたように思います。
現地の人に優しく声をかけてもらい、食事をともにし雑魚寝で休むことができました。
日本でも、山形の雪山から凍えながら降りてきた時に
旅館の女将さんがお汁粉作って待っていてくれたそうです。
とても装備には置き換えられない話だと思います。
そして、今、この瞬間も川は流れているのです。
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全ての装備を知恵に置き換える
石川直樹
晶文社 2005年
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