読了。
小説が読みたくなったので棚から引き抜いた一冊。
ちょうど主人公の二人は自分とたまたま同世代だった。
過去の回想シーンで引き合いになる事件・事故は、
実際に自分も目にしているせいもあって
妙な生々しさを話の中に醸し出している。
日航機123便墜落事故、チェルノブイリ原発事故、
昭和天皇崩御、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件。
テーマはきっと家族なんだと思うけれど、
昔の話ができるのは、その時一緒にいたからだということで
血の繋がりとか、家系とかはあまり関係ないようだ。
たとえ、両親同士がただならぬ関係であっても、
二人のいない今、親しい関係が築けているのであれば、
長いこと家族として生活していた家に再び一緒に住まうことは、
彼らにとって自然なことなのでしょう。
文章がとてもふわふわしているというか、
中空を漂うような定まらない感じを最後まで受けるけれど、
書かれている話はグロテスクな内容だ。
特に亡くなった母親を回想するシーンで
突き放したり、あるいは刺しこむような言葉を子どもに投げる母親が怖い。
また、それを傍らで飄々と見ている父親も。
最後までどこかがずれていると違和感が続く話。
本文中にはこんなことが書いてあった。
生きているもの同士が、南京錠や鍵の凹凸のように
きっちりとはまりあうことは、ない。
必要な時以外、容易に開けることはできないのだけれど
最後は大きな音とともに瓦解してしまう。
何かが歪んだままでいると
いつかはその歪みを解消しようとする力が
はたらくのでしょうか。
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水声
川上弘美
文藝春秋 2014年